問診
問診とは、疾病の発生や発展、治療経過、現在の症状、他の疾病との関連などを知るために、病人や病人の付き添いに質問することをいいます。

問診は臨床上重要であることはもちろん、四診の中でも重要な地位を占めます。病歴、自覚症状、既往歴、家族歴など疾病に関するあらゆる情報を得られるのは問診だけです。これらの情報をもとに、病情を分析し、病位を判定し、病性を把握して、弁証論治の拠り所とします。注意しなければならいないのは、病人自身が話すことはみな主観による症状で、情志や素因と疾病の関係などの客観性は欠落しやすいので、如何に聞き出すかが重要となります。同時に、尋ねる側が目的意識を持ち、病情の筋道を探ることに重点をおいて、病人の主となる病気を訊く必要があります。そのため、歴代の医家は問診に重きを置きました。

問診において、最初に尋ねなければならないのは、主となる病気についてです。その後、その病気の進行状況など詳細について尋ねます。そして、熱意と責任のある真摯な態度で問診に臨み、些細なことまできちんと聞きます。病人のいうことに共感し、和やかで親しみのある話し方を心掛けます。妄りに専門用語を用いることなく、相手が解りやすい言葉で、理解できるよう辛抱強く説明します。このような問診ができる者にのみ患者は信頼をおぼえ、心を開いて詳細を話してくれるのです。病人のいうことが曖昧で解りづらい場合には、如何に聞き出すかが重要となりますが、問診する側の主観を押しつけたり、暗示に掛けるようなことをしては、正しい情報を得ることができなくなります。また無闇に病人を刺激したり、落ち込ませたりしないようにし、病人が病気に打ち勝つことができるよう配慮します。重病人の場合は、緊急のため重点のみをチェックし、落ち着いてから再度不明な点を問診します。厳しすぎる要求や、問診に手間取ると、救急処置の妨げになるので注意します。

 

必須項目を問う

病人の氏名年齢性別婚姻民族職業出生地現住所などは最低限必要な項目です。これらをカルテに記載しておくと、病人の診察や治療に責任が持て、便利で診断の参考になります。例えば、乳幼児、青壮年、老人は体質が異なりますが、年齢を訊くことで身体の強弱や薬量を的確に判断することができます。性別によっても特徴的な疾患があります。女性の場合は、月経、おりもの、妊娠、出産を訊くことで婦人科疾患を考慮でき、また他の病気であっても参考にすることができます。職業が病気の原因になることもあります。水中で作業する仕事の場合は湿邪を受けやすく、珪肺症や鉛中毒のように特定の職業において発症しやすい疾患もあります。出生地や現住所を訊くことで、地域特有の疾患を知ることができます。

 

生活習慣を問う
生活習慣とは、病人の生活状況、飲食の嗜好、運動や休養、生活のリズムなど生活全般を指します。これらは病気を診断に際して重要な意義があります。肉体的あるいは精神的な状況、また経済状態などは、病気に一定の影響を与えます。毎日楽しく生活していれば、気血は調和し、健康で病気知らずです。しかし、苦労の多い生活で、精神的にも負担が大きければ、気血が滞り、肝鬱気滞が起こりやすくなります。偏食五味臓腑の気の異常な盛衰を招きます。熱いものを好んで、冷たいものを嫌がるのは陰気偏盛で、反対に冷たいものを好んで、温かいものを嫌がるのは陽気偏盛です。生活が大変で疲労が激しい場合は労傷病証が、逆に生活に余裕があってあまり動かない場合は、が失調して痰湿が多くなります。生活のリズムが崩れている場合は、いろいろな病気の原因となります。

家族歴と既往歴を問う
家族歴とは、病人の直系親族の罹患歴や健康に関する状況を指します。肺病や精神障害など、ある種の伝染性疾患や遺伝病の参考になります。

既往歴は、病人本人のこれまでの健康状態と罹患歴を指します。例えば、もともと肝陽上亢であれば中風になりやすく、精神障害があれば何らかの刺激により再発しやすいなど、現在の病気の診断に役立ちます。

薬歴を問う
薬歴とは、病人が現在服用している薬剤や、過去に服用したことのある薬剤に関する状況を指します。服薬により症状がある程度に抑えられていたり、反対に健康を害していたりすることもありますし、他の薬剤や食品との相互作用で症状が現れる場合もあり、現在の病状の参考になります。また薬剤だけでなく、健康食品なども影響を与える場合があるので、きちんと訊いておくことが大事です。例えば、偏陽なのに温性の薬剤を服用すると症状が悪化しますし、虚証の便秘であるにも関わらず、食物繊維を多量摂取していれば、ますます排便が困難になります。

起病を問う
起病(きびょう)とは、疾病の発生や発展、治療などの全課程のことで、病気を診察する上でも重要な意義があります。

発病原因を知ることで、疾病の性質を理解することができます。例えば、冬に外感風寒により発病した場合、多くは表寒証となります。情志鬱結により発病すれば、多くは肝気鬱滞を起こします。

病程の長短は、疾病の虚実を知ることができます。例えば、突然の耳鳴りの多くは肝火上炎気実証ですが、徐々に発症する耳鳴りのほとんどは肝腎不足虚証です。

治療の経過や効果は、弁証や用薬の参考になります。例えば、冷やすはたらきのある薬を服用した病人に効果が見られない場合、熱証でないと判断できます。反対に、温める薬を服用して症状が軽減すれば、寒証と判断できます。主症が脹満であっても、気を行らせて脹満を改善する薬で却って悪化するようなら、脾胃虚弱による消化不良で、実際は虚証と判断できます。

このように、疾病の全体像を把握することで、正確な診断が可能となるのです。

現在の症状を問う
現在の症状は、問診の主たる部分であり、弁証の重要な拠り所となります。中医学では、現在の症状を問うことを最も重要と考えるので、問診内容も詳細を極め、各症状に対する臨床的な意義は奥深いものとなっています。明代の医家・張景岳は、問診の重要な基礎を『十問歌』という形で残しました。後の人が更に手を加え、以下のような歌を完成させました。この歌は、実際に問診する際、大変参考になりますので覚えておくと便利です。

一に寒熱、二に発汗、三に頭身、四に便、五に飲食、六に胸、七に聾、八に渇き、これを弁証、九に病歴、十に原因。再診時は服薬後の変化。女性の月経は必須、周期、無月経、不正出血みな訊きましょう。小児は発育状況も訊きましょう。

 

寒熱を問う
寒熱とは、病人の寒熱の感覚のことで、臨床上常時見られる症状であり、問診の重要内容の一つといえます。病人の様々な寒熱の状況を訊くことにより、疾病の表裏寒熱虚実を確定する重要な根拠にすることができます。臨床では、悪寒発熱、但寒不熱、但熱不寒、寒熱往来の4つがよく見られます。

悪寒発熱
悪寒発熱(おかんはつねつ)とは、悪寒と発熱の2つの症状が同時に見られることをいい、発熱は断続的に続くのが特徴です。悪寒とは、病人が寒気を感じて、衣類を着用したり、火のの側で温まっても、治まらない状態をいい、発熱とは、病人の体温が上昇するか、あるいは平熱であるものの、全身または局所に熱を感じるものをいいます。

悪寒発熱は、外邪が体表を襲うことで起こります。体表を襲った外邪の影響は衛陽に及び、肌表の温煦が失われるために悪寒となります。また正邪の抗争が起こるため、陽気は体表に向かい発熱します。寒邪の場合は、肌表を収斂させるため、汗孔が閉塞した状態になり、陽気を発散することができなくなって熱が籠もり発熱します。

悪寒発熱はその程度や併発する症状で、大きく以下のように分類することができます。また外邪の性質にかかわらず、病邪が軽度の場合は悪寒発熱ともに軽く、病邪が重度の場合は悪寒発熱も重くなる傾向があります。

1.

悪寒が重く、発熱が軽いのは、表寒証。陰邪である寒邪が原因のため、肌表を収斂し、陽気を損傷するので、悪寒が顕著になります。
   
2.

悪寒が軽く、発熱が重いのは、表熱証。陽邪である熱邪が原因のため、陽盛になりやすく、発熱が顕著になります。
   
3.

発熱が軽く、悪風と自汗があるのは、太陽中風証(表虚証)。風邪は肌表を開かせるので、汗孔が開いて発汗し、風に当たるのを嫌がります。

 

但寒不熱
但寒不熱(たんかんふねつ)とは、病人が畏寒がするものの発熱がない状態をいい、裏寒証に見られます。畏寒(いかん)とは、体が冷えて体を丸めて縮こまってしまう状態をいいます。多くは、もともと陽虚で肌表の温煦ができないか、あるいは寒邪が直に体に侵入して体の陽気を損傷したことが原因で起こります。病人がひどい冷えを感じ、着衣を増やしたり、火の側で暖を取ることで症状が軽減するのが裏症畏寒の特徴です。表証では悪寒が起こり、裏証では畏寒が起こるので、表裏の鑑別の重要な根拠となります。

但寒不熱は大きく以下のように分類することができます。

1.

慢性疾患に伴う体力低下で畏寒し、脈沈遅無力の場合は、虚寒証。慢性疾患で陽気が虚衰し、肌表を温煦できないために起こります。
   
2.

急性疾患で腹部やその他の局所が激烈に冷え、脈沈遅有力の場合は、実寒証。寒邪が直に体内に侵入し、臓腑やその他局部の陽気を損傷するために起こります。

 

但熱不寒
但熱不寒(たん熱ふかん)とは、病人が発熱を感じるものの冷えがない状態をいい、裏熱証に見られます。

但熱不寒は、発熱のタイプと疾病のタイプにより分類できます。発熱タイプによる分類は以下の通りです。

1.



壮熱(そうねつ)とは、病人に39℃以上の高い発熱があって、熱が引かない状態をいいます。裏実熱証に属し、顔が赤い、のどが渇いて冷たいものを欲しがる、大汗、脈洪大などの症状を伴います。これは表邪に入って化熱した場合や、風熱が内伝した場合に、正盛邪実で正邪の抗争が激しく、裏熱亢盛となり、この熱が体表に現れるために起こります。
   
2.
















潮熱(ちょうねつ)とは、まるで潮の満ち引きのように、病人が決まった時間に発熱したり、決まった時間に熱症状が甚だしくなる状態をいいます。臨床上、以下のように分類されます。

陽明潮熱(ようめいちょうねつ)日晡潮熱(にっぽちょうねつ)ともいい、日晡すなわち15:00~17:00に熱症状が甚だしくなります。熱は比較的高く、腹脹や便秘を伴います。陽明腑実証に属し、陽明胃経と大腸経に邪熱結したことが原因で、陽明経気の強くなる日晡の時間帯に悪化するのが特徴です。

湿温潮熱(しつおんちょうねつ)皮膚を触ると最初は熱く感じないのに、時間が経つと灼熱感を感じるすっきりしない身熱不揚(しんねつふよう)が特徴で、午後に甚だしく、同時に頭や体が重くなるなどの症状が見られます。湿温病に属し、湿邪が粘っこくてしつこいため、湿が熱を押さえ込んで身熱不揚となり、午後に人体の陽気が衰えて抵抗力が低下する午後に悪化します。

陰虚潮熱(いんきょちょうねつ)午後または夜に低い熱症状を感じるもので、骨から体表に向けて熱を発しているような感覚を感じる状態をいいます。頬が赤い、盗汗(寝汗)などの症状を伴い、陰虚証に属します。午後、陽気が衰えて抵抗力が低下してくると、虚熱の邪気が強くなり、病状も熱症状も悪化します。夜、衛陽の気が体内で陰液を炙るので、骨から熱を発しているように感じます。

   
3.
微熱(びねつ)とは、37~38℃くらいの比較的低い軽度の発熱をいいます。内傷病や温熱病などの後期によく見られる症状です。

疾病タイプによる分類は以下の通りです

1. 陰虚発熱(いんきょはつねつ):陰虚潮熱に同じ。
   
2.



気虚発熱(ききょはつねつ):臨床上長期に渡る微熱のことで、心身の疲労で悪化したり、高熱が引かなかったりするものをいいます。息切れや自汗(汗が漏れ出る)、疲れやすい、体に力が入らないなどの症状を伴います。脾気損傷に属し、脾気の不足で清陽が昇発できず、陽気が正常に全身に行き渡らないことにより、肌表に熱が籠もって発熱するために起こります。
   
3.

小児夏季発熱(しょうにかきはつねつ)夏の暑い時期に、小児が発熱して熱が引かない状態をいい、イライラ、のどの渇き、無汗、多尿などの症状を伴い、秋に涼しくなっても自然に治らないのが特徴です。これは、小児がまだ気陰不足で体温調節がうまくできず、夏の暑さに対応できないために起こります。

 

寒熱往来
寒熱往来(かんねつおうらい)とは、悪寒と発熱が交互に現れる状態をいい、半表半裏(はんぴょうはんり)の特徴的な症状で、少陽病やマラリアで見られます。
臨床的には、以下のように分類されます。

1.



不定期に、悪寒と発熱が現れ、口が苦い、のどの乾燥、めまい、胸や脇の不快感、食欲不振、脈弦などを伴うものは、少陽病に属します。外感表邪からに入ろうとしているものの、未だ裏に到達できずに半表半裏の間にある状態で、正邪の抗争がこの場で起こるため、邪気が強いと悪寒が、正気が勝ると発熱が現れます。
   
2.



がたがた震えて歯の根が合わないほどの寒気と壮熱が、定期的に、交互に現れます。日に一度、あるいはに三日に一度現れるのが特徴です。激烈な頭痛、のどの渇き、多汗などを伴い、マラリアに罹患した場合に見られます。マラリアの邪(マラリア原虫)が人体に侵入し、半表半裏の膜原に潜伏した場合、邪気が内に侵入しようとすると震えを伴う寒気が起こり、外に出ようとすると壮熱が起こります。

 

発汗を問う
汗とは津液一種で、津液が陽気により蒸化されて汗孔から体表に出たものをいいます。営衛の調和が取れていれば発汗は正常で、汗は皮膚を潤すなどのはたらきをしています。外感内傷どちらでも発汗異常が起こり得るため、病人に発汗について尋ねることは、疾病の表裏寒熱虚実を鑑別するのに役立ちます。発汗について問診する際に重要なのは、発汗の有無、発汗の時間、発汗の量、発汗部位と、発汗に伴う症状です。

表証弁汗
外感表証の病人の発汗について尋ねる場合、外感表邪の性質を鑑別し、病人自体の営衛の失常を知ることが重要です。表証では、発汗の有無がポイントになります。

1.


表証無汗で、重度の悪寒、軽度の発熱があり、頭や首が強ばって痛み、脈浮緊であれば、外感寒邪による表寒証すなわち表実証といえます。寒邪は陰邪で収引の性質があり、表を収斂してそうりや汗孔を塞ぐため、汗が出ません。
   
2.


表証有汗で、発熱悪風があり、脈浮緩であれば、外感風邪による太陽中風証すなわち表虚証といえます。風邪は陽邪で開泄させる性質があるため、風邪が表を襲うと、そうりが開いて津液が漏れだし、発汗が見られます。

裏証弁汗
裏証の病人の発汗について尋ねる場合、疾病の寒熱と病人自体の陰陽の盛衰を知ることが重要です。裏証で見られる発汗異常は、大まかに以下の4つに分類されます。

1.
自汗(じかん)日中に発汗が見られるもので、動くと悪化するのが特徴です。冷えや心身疲労などを伴います。気虚や陽虚に属します。
   
2.

盗汗(とうかん)睡眠中に発汗するもので、覚醒すると汗は止まります。潮熱や頬の赤味を伴います。陰虚に属します。
   
3.







大汗(だいかん)多量に発汗するもので、津液を大量に損ないます。臨床上、虚実の分類があります。

高熱が出て止めどなく発汗し、顔が赤く、のどが渇いて冷たいものを欲しがり、脈洪大ならば、実熱証に属します。これは表邪が裏に入って化熱したか、あるいは風熱内伝による裏熱亢盛で、津液が炙られて外に押し出されるために起こります。

玉のような冷や汗が出て止まらず、顔面蒼白で、手足が冷え、脈微欲絶ならば、亡陽証に属します。これは陽気が外に激しく漏れ出て、津液を留めておくことができないために起こります。

   
4.





戦汗(せんかん)最初悪寒戦慄があり、苦痛の表情を浮かべた後、少し我慢していると発汗するものをいいます。傷寒病の正邪闘争が激烈な時点や、疾病発展の分岐点で見られます。戦汗の多くは、邪気が強力で正気が怯み、邪気が居座って去らない状況下で見られます。一旦、正気が回復して正邪の闘争が起こる時に発汗します。発汗後、熱が退いて脈緩となれば、邪気が去って正気が安定し、病が快方に向かっていると考えられます。しかし、発汗後、また高熱が出て、脈が非常に早くなれば、邪気が勢力を増して正気が衰退し、病が悪化していると考えられます。このような点から、戦汗は疾病における分岐点ということができます。

局部弁汗
疾病によって発汗異常が体の局所に見られる場合があり、疾病の診断に役立ちます。臨床的には以下のように分類されます。

1.






頭汗(とうかん)頭あるいは頭から首にかけて比較的多く発汗するものをいい、別名を但頭汗出(たんとうかんしゅつ)ともいいます。多くは上焦邪熱あるいは中焦湿熱が上蒸したためか、虚陽上越で危篤な状態です。頭部の発汗がひどく、顔が赤くて、イライラして落ち着かない、のどが渇く、舌尖紅、苔薄黄、脈数ならば、上焦邪熱が原因と考えられます。また頭部の発汗がひどく、頭部や体が重く、身熱不揚で、腹部が重苦しく、苔黄膩ならば、中焦湿熱が原因の湿温病と考えられます。上焦邪熱、中焦湿熱とも、熱が陽経を巡って上蒸し、頭部に至ったことによります。危篤状態の病人が額に脂汗をかいて、四肢の冷え、気喘、脈微ならば、陰陽離絶による虚陽上越で、津随陽泄の現れです。
   
2.





半身汗(はんしんかん):病人の体の左側、右側、下半身など、ある一方の半身のみ発汗し、他方は汗をかかないことをいい、発汗のない側の経絡が詰まっていて、気血の運行がうまくいっていないことを表します。中風、痿症、半身不随などに見られます。
   
3.
手足心汗(しゅそくしんかん):病人の掌、足の裏に比較的多く発汗するものをいい、多くは脾胃と関連があります。これは脾胃は四肢を主り、手足の陽の本をなしているためで、脾胃に病があると運化が悪くなり、津液をうまく四肢に運べなくなるために起こります。

頭部と身体を問う
頭や身体の痛みをはじめとする諸症状は、それ自体が主症状としてではなく、主症状の随伴症状としてもよく見られます。症状の発症時間の長短、部位、症状のなくなる時間、寒熱の影響等は、陰陽表裏寒熱虚実を弁別する上で重要となります。

頭部を問う
頭は、諸陽が会する場であり、精明之府ともいわれ、脳は髄海といわれています。は骨を主り、髄を生み、髄が集まって脳となります。外感内傷とも頭部の病証を引き起こします。病のある経絡、寒熱、虚実などにより、頭部に現れる症状は異なります。ここでは主に、頭痛とめまいについて説明しましょう。

頭痛を問う

頭痛の発症部位や痛みの特徴によって、どの経絡に病があるのか鑑別することができます。

1.
陽明経(ようめいけい)頭痛前頭部の痛み。足の陽明胃経は前頭部に至るため。
   
2.

少陽経(しょうようけい)頭痛側頭部の痛みで、こめかみ付近にひどい痛みを感じる。足少陽胆経は側頭部を循行するため。
   
3.
太陽経(たいようけい)頭痛後頭部からうなじにかけての痛み。太陽膀胱経はうなじから後頭部を循行し、脳に至るため。
   
4.

厥陰経(けついんけい)頭痛頭頂部の痛み。足の厥陰肝経は目に連なり、正中線を通って頭頂部に至るため。
   
5.
少陰経(しょういんけい)頭痛歯痛を伴うことの多い頭痛。少陰腎経は、骨や髄を生み、髄海は脳を充たすが、腎虚で髄海が充たされなくなるため。
   
6.
太陰経(たいいんけい)頭痛めまいを伴い重い感じの頭痛で、下痢や自汗を伴う。は昇清を主るが、脾虚で清陽が上らなくなるため。

また頭痛の性質によって、外感内傷寒熱虚実を鑑別することができます。

急性の頭痛で、痛みが比較的激しく、休みなく続く場合、多くは外感頭痛で実証といえます。頭痛が継続し、風に当たると悪化する場合は風寒頭痛で、風寒の邪が足太陽経から経脈を通ってを塞いだために起こります。頭痛が熱で悪化し、顔が赤く、目が充血する場合は風熱頭痛で、風熱の邪が目、耳、口、鼻など清竅を乱したために起こります。頭の奥が痛み、体が重だるい場合は風湿頭痛で、外感湿邪が陽気の運行を妨げ、清陽が上らなくなったために起こります。

慢性の頭痛で、痛みが比較的穏やかで、痛みが起こったり、止んだりする場合、多くは内傷頭痛で虚証といえます。頭痛がなんとなく続き、疲れるとひどくなる場合は気虚頭痛で、中気損傷により清陽が上らず、脳を養えないために起こりますが、これは太陰頭痛に当たります。頭痛にめまいを伴い、顔が青白くい場合は血虚頭痛で、営血虚損により、上部を滋養することができず、清竅を養えないために起こります。脳が空虚な感じのする頭痛で、足腰がだるい場合は腎虚頭痛で、腎精不足のため、髄海を充たせないために起こりますが、これは少陰頭痛に当たります。

頭暈を問う
頭暈(ずうん)とは、本人のみが感じるめまいなど頭部の揺れやくらむ感覚で、軽度の場合は目を閉じれば治まりますが、重度では視野の揺れや回転が起こり、立っていることもできなくなります。悪心嘔吐を伴う場合も多く、ひどいと気絶して倒れることもあります。頭暈は症状から、原因を鑑別することができます。

頭暈と同時に脹った痛みがあり、顔が赤く、耳鳴り、口苦、のどの乾燥を伴う場合、肝陽上亢と考えられます。肝陽が亢進して清竅を乱し、内風が生まれたために起こります。ぼーっとした感じの頭暈で、胸悶、悪心、嘔吐、痰などが伴う場合、痰湿内阻と考えられ、痰湿が滞り、清陽が上らないために起こります。頭暈がして目がチカチカし、疲れた時や急に立ち上がった時に悪化し、顔色が白く、舌淡、動悸、不眠などを伴う場合、気血両虚と考えられます。気血が不足して、上部に巡らず、脳を養えないために起こります。頭暈と同時に耳鳴りがあり、遺精、健忘、足腰のだるさを伴う場合、腎精虚損と考えられます。腎精不足で髄海を充たせず、脳が養えないために起こります。

全身を問う
胴体や四肢など全身には十二経絡が循行しており、臓腑気血のはたらきによって養われています。または肌肉、四肢を主り、は腰の府をなしています。外感風・寒・湿邪は経絡の気血を滞らせ、内傷脾腎虧虚では四肢、肌肉、腰府を養うことができなくなります。これらは全て、四肢、肌肉、腰などに病変をもたらす原因となり、診断の根拠となります。

 

身体痛を問う
病人の身体痛の多くは、外感風寒・風湿によりますが、これは寒湿の邪が経絡の凝滞を引き起こす性質があり、経気不舒によって気血不和が起こるためです。外感暑湿疫毒の場合は、顔が赤くなって発疹が現れ、杖で打たれたような身体痛が発症しますが、これは湿熱疫毒が気血の運行を阻滞させるために起こります。慢性疾患で起きあがることができず、全身が痛む場合の多くは、営気不足によって気血不和が起こるためです。

身重を問う
頭や体が重だるく、腹部の不快感があり、苔膩で、食欲不振、軟便が見られる場合は、感受湿邪が原因で、湿邪の性質が、粘って重く、しつこいため、陽気を停滞させ、経絡不暢となることで起こります。体が重だるく、横になりたがり、少気があってしゃべるのが億劫で、疲れやすく、体に力が入らない場合は、脾気虚損が原因で、水穀精微の運化や昇清ができず、肌肉や四肢を養えないために起こります。

四肢の疼痛を問う
四肢の関節痛の多くは痺証(ひしょう)に見られ、外感風・寒・湿邪が原因となります。遊走性の疼痛である行痺(こうひ)が見られる場合は風邪が主な原因といえますが、これは風邪の性質が、移動しやすく、状態を変化させやすく、遊走性で一定しないことによります。激烈な疼痛である痛痺(つうひ)が見られる場合は寒邪が主な原因といえますが、これは寒邪に収斂させ滞らせる性質があるため、経絡や気血を滞らせて流れを悪くさせるために起こります。重い固定痛である着痺(ちゃくひ)が見られる場合は湿邪が主な原因といえますが、これは湿邪の性質が、粘ってしつこく、重いため、局部の気機を阻滞させることで起こります。風湿が長く停滞して熱を持った場合を熱痺(ねつひ・ねっぴ)といい、関節が赤く腫れて痛んだり、ふくらはぎに結節や紅斑が見られたりします。

腰痛を問う
腰がなんとなく痛み、だるくて力が入らない場合は腎虚腰痛に属し、腎精虧損で骨髄を充たすことができず、腰府を養えないことが原因です。腰が冷えて重く痛み、天気が悪いと悪化する場合は寒湿腰痛に属し、これは寒湿の邪が腰に侵入して経絡を阻滞させ、気血の運行が低下したことが原因です。鍼で指したような固定痛が腰にあり、触ると不快で、寝返りを打ったり、態勢を変えることができない場合はお血腰痛に属し、これは打撲や捻挫などによってお血が局部に停滞したため、経脈や気血の運行が不暢となって起こります。

胸脇脘腹を問う
胸腹部には臓腑があり、その部位の状態を確認することで、病人の訴えや病の所在を知ることができます。

胸部を問う
中医学では、両乳頭の間(だん中穴)辺りを胸、だん中からみぞおち(鳩尾)までを膺胸といいますが、一般的には両方を合わせて胸といいます。胸は上焦に属し、ここにがあり、そして宗気の集まる場所でもあります。

1.

胸痛があって息苦しく、肩や腕まで痛む場合は胸痺(きょうひ)。胸陽不振による痰濁内阻気虚による血おで、心脉気血の運行不暢になったために起こる。
   
2.

胸から背中にかけての激烈な痛みで、顔色が青灰色で、手足の関節まで青くなる場合は真心痛(しんしんつう)。心脉が急に詰まって閉塞し、不通となるために起こる
   
3.
胸痛があって、熱の勢いが強く、高熱で顔色が赤く、喘促して鼻がぴくぴくする場合は肺実熱証。風熱襲肺により、宣粛が失われたために起こる。
   
4.

胸痛があって、潮熱盗汗が見られ、咳が出て、痰に血が混じる場合は肺陰虚証。陰虚化燥で熱が生まれ、虚火が肺を傷るために起こる。
   
5.

胸悶咳で、白色の痰が多い場合は痰湿犯肺脾虚で痰が生まれ、痰濁が上部にある肺を犯すために起こる。
   
6.

胸痛があって体が熱く、咳や膿血痰があり、生臭いにおいのする場合は肺癰(はいよう)。熱毒が肺に蓄積して気血が滞って固まり、肉が腐って膿を形成するために起こる。
   
7.
胸が張って遊走性の痛みがあり、太息があって、怒りっぽい場合は気滞証。情志鬱結不舒により胸中の気機が不利となり起こります。
   
8.
胸に固定して移動しない刺痛がある場合は血お証。打撲や捻挫などの外傷で胸部の脉絡にお血が滞ったために起こります。
   
9.


胸の脹りがあるものの痛みのないものを痞満(ひまん)といいます。胸部の冷え、咳が出て、涎が多く、脉遅などを伴う場合は寒痞(かんぴ)体が熱く、のどが渇き、脉数を伴う場合は熱痞(ねつひ)少気があって呼吸がスムーズでなく、太息があれば楽になって、脉弱の場合は虚痞(きょひ)。痰が多く、脉滑の場合は痰痞(たんひ)

 

脇部を問う
両乳頭の横を脇、その下部の肋骨が尽きる辺りを季脇といいます。脇の横隔膜の下部から肋骨の末端部周辺はがあり、肝胆の経脉が循行しています。肝脉は下から脇に上行し、胆脉は上から脇に下行しています。このため、脇部疾患の多くは、肝胆とその経脉の病変に属します。この他、痰飲の一種である懸飲(けんいん)や気滞血おでも見られます。

1.
脇部に脹った痛みがあり、太息があって怒りっぽい場合、多くは情志不暢による肝気鬱結です
   
2.

脇部や肋骨周辺に熱感を伴う痛みがあり、顔色が赤く、目が充血している場合、多くは肝火鬱滞により、脇部の脉絡が火で炙られるために起こります。
   
3. 脇部に脹った痛みがあって、体や目が黄色くなる場合は、肝胆湿熱による黄疸病です。
   
4.

脇部に固定して移動しない刺痛がある場合は、打撲や捻挫など外傷による血お阻滞で、経絡不暢になるためです
   
5.

脇に痛みがあって肋骨付近に膨満感を伴い、咳などでも痛む場合は、飲邪が胸脇に停滞した懸飲病です。
   
6.

傷寒病で胸脇苦満があって、往来寒熱する場合は少陽証です。雑病初期に胸脇部が脹って痛み、情志不舒が見られるのは肝気鬱結によるものです。

胃脘部を問う
胃脘(いかん)とは、ぞおちの下から上腹部の中部までをいい、胃のある部分全体を指します。ツボでいうと鳩尾から上脘までを心下(しんか)といいます。心下から下脘の間に胃が収まっています。胃は飲食物を受け入れて消化するところで、調和が取れ、飲食物が下降するのが正常な流れです。寒熱、消化不良、気滞などにより陰陽失調が起こるとみな胃を損傷し、脘部に症状が現れます。このため胃脘部の状態を尋ねることは、胃の病の寒熱虚実を知る上で重要となります。

1.

胃脘に激烈な冷えた痛みがあって、温めると痛みが軽減する場合は寒邪犯胃で、寒邪が直接胃の陽気を損傷したために、胃が収縮緊張して起こる痛みです。
   
2.

胃脘に灼熱感を伴う痛みがあって、食べても食べてもお腹が空き、口臭や便秘を伴う場合は胃火熾盛で、火邪津液を損傷したために、胃の消化が促進されて起こります。
   
3.
胃脘に脹った痛みがあり、げっぷがあって、イライラしたり起こったりすると痛みが悪化する場合は胃の気滞で、気鬱不舒による肝気犯胃が原因です。
   
4.
胃脘に固定した刺すような痛みがある場合は胃のお血で、お血が胃の経絡に停滞したことが原因です。
   
5.

胃脘がなんとなく痛んで、温めたり、手を当てたりすると痛みが軽減し、透明で稀薄な水分を吐く場合は胃陽虚で、陽気が不足したために冷えが生まれ、胃のはたらきが低下することで起こります。
   
6.

胃脘に灼熱感を伴う痛みがあって、胸焼けがして、空腹感はあるのに食べられず、舌が赤く、苔が少ない場合は胃陰虚で、津液が不足したために虚火が炎上して起こります。

腹部を問う
腹部は比較的範囲が広く、大まかには大腹、小腹、少腹の三部に分けることができます。大腹は上腹部で脾経と関係があります。小腹は臍下から恥骨周辺までをいい、膀胱経や子宮と関連があります。少腹は小腹の両脇で肝経が通り、生殖器と肝経があります。この他、腸も腹部にあり、また衝脈や任脈なども通っています。このことから、腹部からは病の寒熱虚実臓腑との関連を判断することができます。

1.
大腹がなんとなく痛み、温めたり、手を当てたりすると軽減して、軟便がある場合は、脾胃虚寒により脾胃の機能低下が現れた状態です。
   
2.

小腹に脹った痛みがあり、尿が出ない場合は膀胱の機能低下によるものです。小腹に刺すような痛みがあるものの排尿ができる場合は、下焦お血が停滞しています。
   
3. 少腹に冷えた痛みがあり、陰部に引っ張られるような痛みがある場合は寒凝肝脈で、肝経の脉が緊張収縮したために起こります。
   
4.
お臍の回りが痛み、触ると塊があって、その塊が移動する場合は蟯虫や蛔虫などによる虫積です。
   
5.
急性で激烈な脹ったような痛みの腹痛で、触ると不快、食べると悪化する場合の多くは実証です。
   
6.
腹痛が緩やかで、なんとなく痛み、手を当てたり、食べると軽減する場合の多くは虚証です。
   
7. 温めると痛みが軽減する場合の多くは寒証です。
   
8. 冷やすと痛みが軽減する場合の多くは熱証です。

耳目を問う
は耳に開竅し、耳は多くの経脈の総合する場所でもあります。は目に開竅し、五臓六腑の精気は皆上って目に注がれます。そのため。病人の耳と目の状況を知ることは、肝、腎とこれらと関連のある胆、三焦、またこれらに関わるその他の臓腑の病変を理解する手掛かりとなります。

耳を問う
臨床でよく見られる耳の症状は以下の通りです。

1.





耳鳴(じめい)耳の内部で潮流や蝉の鳴き声のような音がして聴覚を妨害するものをいいます。片耳のみの場合と両耳の場合、また症状が持続する場合と断続的に発症する場合があります。音が大きく、耳を塞ぐと悪化する場合は実証に属します。多くは肝・胆・三焦経のが燃え上がって生理機能をかき乱すために起こります。また脾虚湿盛で清陽が昇れないために、清竅失養となる場合もあります。音が小さく、塞ぐと軽減する場合は虚証に属します。多くは腎虚精虧で髄海を充たすことができず、耳を養えないために起こります。
   
2.





耳聾(じろう):程度の差はあるものの聴力の減退を指し、ひどい場合は聴力を喪失することもあります。傷寒耳聾は、多くは邪が少陽経にあって、経気を塞ぐために起こります。温病耳聾は、火邪が清竅に覆い被さってふさぎ、陰精が上部に到達できないために起こります。傷寒や温病による耳聾の程度から、病勢の進退を計ることができます。耳聾が徐々に軽減する場合、病は快方に向かっており、逆に悪化するようなら病も進行しているといえます。この他、外感風温で、鼻づまりや頭痛に伴い耳聾が発症することがあります。これらは皆実証で、比較的治癒しやすいといえます。
   
3.
重聴(じゅうちょう)音がはっきり聞き取れないものをいいます。風邪や肝経有熱によく見られますが、他に下元已虧により上盛下虚となった場合にも見られます

目を問う
臨床で両眼によく現れる症状は以下の通りです。

1.


目痛(もくつう)目の激痛で、頭痛、悪心嘔吐、瞳孔散大などを併発することがあり、また雲がかかったように目が青色、緑色、黄色などになる場合もあります。目に変色がある場合は、青風内障、緑風内障、黄風内障といえます。
   
2.


目眩(もくげん)乗り物に乗っているように、見ているものがふらふらと動くことをいいます。頭暈や頭脹、面赤、耳鳴腰膝痠軟を伴う場合は、腎陰気虚による肝陽上亢といえます。頭暈胸悶、体倦、四肢麻木、悪心、膩苔が見られる場合は、痰湿内蘊により清陽が上らないためと考えられます。
   
3.
目昏(もくこん)両眼にきらきらと花が飛ぶようで、目が乾燥し、ものが見えづらいことをいいます。慢性疾患、虚証、高齢者に多く見られ、気虚肝血不足腎精虧耗により目が養えないために起こります
   
4. 雀目(じゃくもく)鳥のように黄昏時になると視力が明らかに減退するもので、肝虚の病に属します。

飲食と味を問う
飲食の量を尋ねることで、脾胃の盛衰を知ることができます。味の好みを訊くことで、臓腑虚実を知ることができます。

口渇と水分摂取を問う
口渇は臨床上よく見ることができる自覚症状のひとつです。水分摂取は人体における津液の主となる起源です。口渇の有無や水分摂取の量と、体内の津液の充実度や輸送状態、陰陽の盛衰との間には密接な関係があります。従って、病人に口渇や水分摂取について尋ねることで、病人の津液の盛衰や輸送における障害などを理解でき、病気の寒熱虚実を判断することができます。臨床上、口渇の特徴や水分摂取の量と、同時に見られる症状から、弁証や分析を行うことができます。

 

口不渇
口不渇(こうふかつ)とは、のどの渇きがないことをいいます。津液がまだ損傷していないか、寒証で明らかに熱邪のない場合に見られます。

 

口渇多飲
口渇多飲(こうかつたいん)とは、のどの渇きが明らかで水分摂取が多いことをいいます。これは津液が大いに損傷していることを表し、臨床的には以下のように鑑別されます。

1.


口大渇喜冷飲:同時に、顔色が赤く、壮熱があり、体が熱くて落ち着かず、大汗を伴い、脉洪大であれば、実熱証に属します。これは裏熱亢盛により、津液が大いに損なわれたために、水分摂取で自ずから救おうとしていることを表します。
   
2.


大渇引飲:尿量が多く、食べられるのに痩せている場合は、消渇病といえます。これは腎陰虧損によるものです。は水液を主り、二便を主り、開合を司ります。腎陰虧損で腎陽亢盛になると、開多合少となり、尿量が増えて、陰液を消耗するために起こります。
   
3.
過度の発汗・吐瀉・排尿後口渇:大汗、過度の嘔吐、過度の下痢、過度の排尿により津液が消耗したために起こります。

 

渇不多飲
渇不多飲(かつふたいん)とは、口渇や口乾を感じても、水分を欲しがらないか、少量で足りる場合をいいます。津液の軽度の消耗や輸送障害の現れで、陰虚・湿熱・痰飲お血などで見られます。

1.


口乾があるものの水分を欲しがらず、同時に潮熱盗汗・頬紅などが見られる場合は陰虚証に属します。陰虚津液不足により、津液が上部に巡ることができず、口が乾きますが、実熱により津液の消耗がある訳ではないので水分を欲しがりません。
   
2.


口渇があるもの水分摂取は少なく、頭身困重があって身熱不揚、脘悶、膩苔が見られる場合は湿熱証に属します。湿熱内困し、津液の気化障害が起こり、津液が口に巡ることができずに口渇が起こります。内部に湿があるため、多く水分は欲しがりません。
   
3.



のどが渇いて温かいものを欲しがるのに、少量しか飲めないか、飲むとすぐ吐いてしまい、同時に頭暈目眩や胃腸がぐるぐる鳴る場合は痰飲内停に属します。痰飲は陰邪なので陽気を損傷しやすく、津液がを化すことができず、上部に巡らないため、口渇があって温かいものを欲しがります。津液の輸送障害であって、津液不足ではないため、渇きがあってもそれほど水分を欲しがりません。飲が胃に停滞し、胃が飲を下降させることができないので吐いてしまいます。
   
4.


口乾があるものの、のどは水分を欲しがらず、うがいだけで落ち着き、同時に舌質隠青または青紫色のお斑が見られ、脉渋の場合は血お証に属します。お血内阻し、気化不利となったため、津液が上部にめぐることができず口乾が起こります。また津液の輸送障害はあるものの、本当に津液を損傷している訳ではないので、のどは水分を欲しがりません。

食欲と食事量を問う
は飲食物で充たされ、飲食物の消化吸収を行います。は飲食物から営養物質を作り出し、水分代謝に関与します。このことから脾胃は後天の本といわれ、脾胃のはたらきは飲食の状況に大きく左右されます。また人は胃気を本とするため、胃気が充分にあるかどうかは疾病の重さや発展と直接的な関わりを持ちます。従って、病人の食欲や食事量を尋ねることは、脾胃のはたらきを理解したり、予後を予測したりする重要な手掛かりとなり、疾病の弁証分析や随伴症状と合わせて詳しく把握することができます。また、疾病の過程で、病人の食欲や食事量の変化が起こることがありますが、これより疾病の発展を知ることができます。一般的に、病人の食欲が回復し、食事量が増えるようなら、胃気も回復しており、予後は良好です。反対に、食欲が低下し、食事量も減るようであれば、胃気の衰退があると見られ、予後はあまりよいとはいえません。この他、慢性疾患や重病でもともと食が細かったにもかかわらず、突然食欲が出て食べたがるようなら、胃気が将に絶えようとする現れで危篤な状態に属します。

食欲減退
食欲減退とは、病人が食べたいと思わないか、甚だしいと食べることを嫌がることをいい、納少(のうしょう)あるいは納呆(のうほう)ともいわれます。臨床的には以下のような状態がよく見られます。

1.


食少納呆(しょくしょうのうほう):同時に痩せて体に力が入らず、お腹が脹って軟便で、舌淡、脉虚の場合は、脾胃の消化吸収や運化能力の低下が原因です。慢性疾患で虚証の場合やもともと気虚の病人に見られます
   
2.


脘悶納呆(かんもんのうほう):同時に頭身困重、軟便、苔膩の場合は湿邪困脾が原因です。脾は燥を好み、湿を嫌うので、湿邪が脾に影響すると運化が失われ、お腹が脹って苦しく、食べる量が減ります。長夏に暑湿を受けた場合によく見られます。
   
3.
納少厭油食(のうしょうえんゆしょく)同時に、黄疸や脇痛、身熱不揚が見られる場合は肝胆湿熱が原因です。湿熱蘊結によりが疏泄を失い、肝が脾を傷つけるため、運化が失われ、食欲減退が現れます
   
4.
厭食(えんしょく):同時に噫気酸腐があり、お腹が脹って痛み、苔厚腐の場合は食滞内停が原因です。暴飲暴食で脾胃を損傷し、脾胃の消化吸収や運化が失われるためにものが食べたくなくなります
   
5.
妊娠悪阻(にんしんおそ):既婚女性が、月経停止し、ものが食べられなくなって嘔吐し、脉滑数冲であれば悪阻が原因です。妊娠により冲脉の気が上逆するため、胃がものを下降できずに起こります。

多食易飢
多食易飢(たしょくいき)とは、病人の食欲が異常に旺盛で、食べても食べてもすぐお腹が空いて、食べる量が異常に増えているにも関わらず体が痩せることをいいます。多食易飢で、同時に口渇心煩、舌紅苔黄、口臭があって便秘する場合は胃火亢盛に属します。胃熱により消化や代謝が亢進することにより起こります。多食易飢で、同時に下痢や軟便を伴う場合は胃強脾弱といえます。胃の消化吸収能力が亢進するため、空腹感が増して食が増えますが、脾の運化能力は低いため、大便に不調が現れます。

飢不欲食
飢不欲食(きふよくしょく)とは、病人に飢餓感があるものの、食べたいと思わないか、食べてもあまり食べられない状態をいい、胃陰不足に見られます。胃もたれや胸焼けを感じ、舌紅少苔で脉細数になりますが、これは胃陰不足で虚火内擾したために起こります。

偏嗜食物
偏嗜食物(へんししょくもつ)とは、病人がある種の食物や異物を偏って欲しがることをいいます。小児が、生米や泥土を欲しがり、痩せて、お腹が脹ったり、痛んだりして、臍の周辺に可動性のしこりがある場合は虫積が原因です。不潔なものを摂るなどして、蛔虫や蟯虫などが体内で成長し、脾の運化に影響し、機体を養えなくなるために起こります。既婚女性が、月経停止し、酸っぱいものを欲しがり、悪心があって、脉滑数冲の場合は妊娠で、生理現象であって病気ではありません。

口中の味を問う
は口に開竅し、またその他の臓腑も経脈を通して口と関係しています。病人の口中の異常な味は、脾胃の失調やその他の臓腑の病変を反映しており、臓腑の疾患の診察に役立ちます。以下に主なものを表にまとめました。

但し、病人の居住地や生活習慣の違いによって、病人の飲食の好みには違いがあります。また、肝病があれば酸味、心病があれば苦味、脾病があれば甘味、肺病があれば辛味、腎病があれば鹹味を欲しがることがあるように、病のある臓腑によって、病人の飲食物の好みが異なることがありますので注意が必要です。

1.

口淡乏味(こうたんぼうみ)脾胃気虚の症状で、脾胃の消化吸収や運化の低下により、食少納呆があって、口中に味がない感覚になります
   
2.

口甜(こうてん)または粘膩(ねんじ)甘味は脾胃に属します。脾胃湿熱の症状で、脾胃に湿熱が滞り固まるため、濁気が上昇して溢れ、口中が甘く感じたり、粘ったりします。
   
3.
口中泛酸(こうちゅうはんさん)酸味はに属します。肝胃蘊熱の症状で、肝熱が口に上炎するために、口中に酸っぱい味が溢れます。
   
4.
口中酸餿(こうちゅうさんしゅう)傷食の症状で、暴飲暴食により脾胃を損傷し、消化不良を起こしたものが胃の中に停滞し、その濁気が溢れてくるため、饐えたような酸味を感じます。
   
5.
口苦(こうく)熱証の症状で火邪胆熱で見られます。苦味も火もに属します。また胆汁は苦味です。そのため、火邪が上炎したり、痰熱が上部に溢れると、口中に苦味を感じます。
   
6.
口鹹(こうかん)寒証腎病やで多く見られる症状です。鹹味は腎に属し、腎には主水作用があります。そのため、腎病や寒水が溢れると口中にしょっぱい味を感じます。

 

睡眠を問う
睡眠の状態と、人体の衛気の循行やの陰陽の盛衰との間には密接な関係があります。疾病で陰陽失調が見られる場合、陽気が陰と交わることができなければ失眠となり、陽気が表面に出てこれなければ嗜睡となります。つまり機体の陰陽の循行状況と盛衰の変化が睡眠障害を引き起こすのです。但し、陰陽の失調は必然的に心神に影響するため、神志不安となって失眠に至ります。病人に睡眠状態を尋ねる場合、失眠や嗜睡の状況だけでなく、その他の症状や随伴症状も同時に訊くことが重要です。

失眠
臨床上、寝付きが悪い、寝てもすぐ目が覚める、または一睡もできないなどの症状のあるものを失眠(しつみん)または不寐(ふび)といいます。一睡もできない場合を除き、同時に夢をよく見るのも特徴です。陽盛陰虚で、陽気が陰と交われず、神を守ることができないので、心神不安になって引き起こされます。

1.


寝付きが悪くて夢が多く、胸のあたりが落ち着かず、潮熱 盗汗、足腰のだるさを伴う場合は心腎不交に属します。腎陰虧損または心火亢盛により、心腎水火が協力できず、水虧火旺となって心神を乱すために起こります。
   
2.


寝付きはいいもののすぐ目が覚めて、動悸、納少、体に力が入らない、舌淡脉虚の場合は心脾両虚に属します。心配事や悩み事が多く、脾を傷つけたために水穀精微の運化ができず、の源が不足して心血虚となり、心神が養えなくなるために起こります
   
3.

眠りが浅く、時々驚いて目が覚め、眩暈、胸が重苦しい、不安感があって落ち着かない、口苦悪心がある場合は胆鬱痰擾に属します。胆は決断を下す臓腑であり、清らかであることをよしとします。ストレスなどにより化火生痰して痰熱内擾し、胆が清らかでなくなると胆気が落ち着かず、心神不安となって起こります。
   
4.

夜、横になると不安で眠れなくなり、心窩部が脹ってげっぷがあり、お腹が脹って苦しく、舌苔厚膩の場合は食滞内停に属します。食事の不摂生で脾胃を損傷し、胃が飲食物を下降できなくなり、濁気が上部に向かうため、心神が落ち着かずに起こります。

 

嗜睡
臨床上、精神的に疲労してだるく、眠くて仕方がなく、意志に反して思わずうとうとしてしまう状態嗜睡(しすい)または多眠(たみん)といいます。陽虚陰盛、湿困脾陽、あるいは温病の邪が心包に入った場合などに見られます。

1.


だるくてうとうとしやすく、頭や目もすっきりせず、身重があって腹部が重苦しく、苔膩脉濡の場合は、痰湿困脾に属します。外寒暑湿やもともと痰湿があって、湿邪困脾したために清陽不昇となり、頭を養うことができずに起こります。
2.


食後に心神ともにだるくなって眠くなりやすく、虚弱体質で、納少、息切れ、体に力が入らないなどの症状を伴う場合は脾気虚弱属します。脾胃気虚により運化能力も弱いため、清陽不昇となり、頭を養うことができずに起こります。
   
3.
極度に衰弱して意識朦朧となり、だるくて眠くて、手足が冷え、脉微の場合は心腎陽衰に属します。傷寒病の後期の重篤な状態で、心陽、腎陽ともに衰微したために、陰寒内盛となるために起こります。
   
4.

昏睡状態になってうわごとをいい、身熱が夜にひどくなったり、斑疹が出たりして、舌絳脉数の場合は、温病の熱が営血に入って心包に及んだため、蒙蔽心神となったために起こります。

二便を問う
大便の排泄は、直接的にはが関与していますが、それ以外にもの運化やの腐熟、の疏泄、命門の温煦など様々な要素が密接に関係してます。また小便の排泄は、直接的には膀胱のはたらきですが、これは気化によるものであり、のはやらきや、三焦の輸送などとも深く関わり合っています。 このことから、二便の状況を問うことは、直接消化吸収や水液代謝の状態を尋ねることであり、また疾病の寒熱虚実の重要な根拠にもなります。

大便を問う
健康な場合、1~2日に一回排便があります。排便はスムーズで、しっかりとした形があって乾燥せず、膿や血液、粘液、未消化物などが混じらない便が排泄されます。

排便回数

便秘(べんぴ)とは、大便が乾燥して固まり、排出が困難で、排便回数が減少することをいい、ひどい場合にはかなり長期間排便がないこともあります。原因は腸の津虧や、大腸の伝導がうまくいかないことなどです。高熱の病人が便秘し、腹部が脹って痛み、舌紅苔黄であれば、実熱証に属します。熱により津液を消耗し、大腸の乾燥がひどくなったことが原因です。病人の顔色が青白く、温かい飲み物を好み、大便が乾燥して、脉沈遅の場合は冷秘で、陰寒内結により腸の気機が停滞したことが原因です。病人の大便か乾燥し、舌紅苔少で脉細数の場合は陰液虧損で、腸の潤いがなくなったことが原因です。慢性疾患、加齢、出産が原因で便秘する場合の多くは気陰両虚で、気虚により排便時に力が入らないことと、津虧により腸の潤い不足が起こるためです。

泄瀉(せっしゃ)とは、大便が稀薄で軟らかく、形がなかったり水様になったりして、排便回数が増加することをいいます。原因は脾の運化の低下や、腸の水分停滞、大腸の伝導失調などです。病人が納少でお腹が脹り、なんとなく腹痛があって、下す場合は脾虚です。脾の運化が低下し、小腸の清濁の分別ができず、腸内に水分が停滞したことが原因です。夜明けに腹痛があって下痢し、排便後は症状が治まり、足腰がだるくて冷える場合は腎陽虚に属します。命門火衰により、脾を温煦できなくなるため、脾が冷えて運化が失調することにより起こります。夜明け前で陽気はまだ旺盛ではなく、陰気が未だ強い時刻であるため、この時間に症状が現れます。お腹がすっきりせず、腐臭のするげっぷがあって、腹痛や下痢が見られ、排便後痛みが軽減する場合は食傷です。暴飲暴食や飲食不潔により、胃腸を損傷し、大腸のはたらきを亢進させるために起こります。便と共に濁が排泄されるので、排便後に症状が軽減します。情志抑鬱があって、腹痛や下痢が起こり、排便後症状が軽減する場合、肝鬱乗脾に属します。肝気鬱結し、脾を剋したために起こります。

大便の質
便秘の乾燥や泄瀉の稀薄以外にも、大便の質の異常が現れる場合があります。

1.

完穀不化(かんこくふか)大便中に比較的多くの未消化物を含むもので、多くは脾虚泄瀉と腎虚泄瀉に見られます。
   
2.

溏結不調(とうけつふちょう)ある時は便が硬く、ある時は稀薄で固さが一定しないものをいい、肝鬱乗脾に見られます。便の前半が乾燥し、後半はゆるくなるものは、脾気虚によく見られます。
   
3.
膿血痢疾(のうけつりしつ)大便に血液が混じるもので、タール状の黒い便を遠血、鮮紅色の血液が便に混じる場合を近血といいます。

排便時の感覚
1.

肛門灼熱(こうもんしゃくねつ)排便時に肛門に灼熱感を感じることで、大腸湿熱に属し、暑邪による泄瀉などに見られます。
   
2.


排便不爽(はいべんふそう)腹痛があってすっきり排便できないことで、多くは肝鬱乗脾や腸道気滞に見られます。また、形を留めないまでに崩れるような黄色い軟便で、すっきり排便できない場合は、湿熱蘊結大腸により、腸の気機や伝導が失調したために起こります。
   
3.

裏急後重(りきゅうこうじゅう)切羽詰まった感じの腹痛があり、時々便意があるものの、肛門が重く引っ張られるような感こがして、すっきり排便できないことで、痢疾に見られます。湿熱内阻が原因で、腸が気滞になるために起こります。
   
4.
滑瀉失禁(かつしゃしっきん)長期間下痢が続いたために排便の調節ができなくなり、大便が漏れてしまうことをいいます。脾腎陽虚が原因で、肛門のしまりが悪くなるために起こります。
   
5.
肛門気墜(こうもんきつい)肛門が下垂するような感覚があって、ひどい場合には脱肛するもので、中気下陥が原因です。

小便を問う
小便は津液代謝によりできる排泄物です。このことから、病人に小便について尋ねる場合、津液が充分あるのか不足しているのか、またの気化は正常に行われているのかを確認することが重要になります。

健康な成人の場合、特別な状況を除いて、一日の尿量は約1.5リットルで、回数は起きている間に5~8回、夜間尿が0~1回です。尿量は水分摂取量や気温、湿度、発汗、年齢などの影響を受けやすく、回数には個人差があります。

尿量
1.

小便の色が薄いか無色透明で、量が多く、畏寒がして温めたがるのは虚寒証です。寒いと汗をかかないので、津液を消耗することがなく、水液が下に滲み出し、小便清長で量が多くなります。
   
2.
のどが乾いて水分摂取が多く、多尿で、痩せるのは消渇病に属します。腎陰虧虚のため、開合異常が起こることが原因です。
   
3.
小便の色が濃く、尿量が少ない場合、実熱証で熱が盛んなために津液を消耗したか、過度の発汗、嘔吐、下痢により津液を損傷したことが原因です。津液不足で尿液のもとが不足することで起こります。
   
4.
尿量が少なく、浮腫が見られるのは、水腫病です。これは肺・脾・腎の機能失調により、気化がうまく行われず、水湿が停滞するために起こります。

排尿回数
1.




小便頻数(しょうべんひんさく)排尿回数が多いものをいいます。小便の色が濃くて量が少なく、切羽詰まった感じで回数が多いのは淋症です。これは下焦に湿熱蘊結したため、膀胱の気化が不利となって起こります。小便の色が薄く澄み、回数が多くて間に合わないのは、腎気不固により膀胱失約となるのが原因です。夜間尿が多く、小便の色が薄くて量が多いのは、加齢や腎病の後期によく見られる症状で、腎陽虧損により、開合失調や膀胱失約となるのが原因です、。
   
2.
癃閉(りゅうへい):小便がたらたらとしか出ないのを癃(りゅう)全くでないのを閉(へい)といい、一般的にはこれらを総称して癃閉といいます。湿熱蘊結、お血、結石阻塞などは実証、加齢による気虚腎陽虧損、膀胱の気化不利は虚証に属します。

排尿時の感覚
1.

小便渋痛(しょうべんじゅうつう)小便が出にくく、切羽詰まった感じや痛み、灼熱感を伴うものをいいます。これは膀胱湿熱により気化不利になったことが原因で起こります。
   
2.

余瀝不尽(よれきふじん)排尿後もたらたらと尿が滴ることをいいます。加齢でよく見られる症状で、腎気不固が原因です。
   
3.

小便失禁(しょうべんしっきん)意識がはっきりしているにも関わらず、小便を我慢できずに漏らしてしまうことをいいます。多くは腎気不固による膀胱失約が原因です。意識が混濁していて失禁する場合は危篤の状態です。
   
4.
遺尿(いにょう)睡眠中、無意識の内に排尿してしまうことで、いわゆるおねしょのことです。腎気不足による膀胱虚衰に多く見られます。

女性に問う
女性には月経、帯下、妊娠、出産、授乳など、男性と異なる生理的特徴があります。これら女性特有の生理は、一般的な疾病によって変化することもあれば、婦人科疾患である場合もあるので、状況をよく見極める必要があります。

月経を問う
月経は女性が成熟するための特有の生理現象です。7×2つまり14歳頃天癸(てんき)が至り、任脈が通じ、太冲脉が盛んになって、体が妊娠できる準備が整い、毎月規則正しく月経が来るようになります。天癸とは腎精から作られる生殖機能を促進して維持するものです。因みに女性は7の倍数、男性は8の倍数で身体の転換期を迎えるため、8×2つまり16歳頃天癸が至り、射精が行われます。

正常な場合、初潮は天癸を迎える数え年の14歳頃、閉経は7×7つまり数え年の49歳頃です。月経周期は28日前後で、一回の月経期間は5~7日間、経血はきれいな赤色で、血塊などを認めません。普通、妊娠中や授乳期には月経はありません。

月経周期、期間、経血の色や量あるいは質の異常な変化は、寒熱虚実の判断材料となります。

月経不順

月経周期、期間、経血の色や量あるいは質の異常な変化があるものを月経不調(げっけいふちょう)といい、以下のように分類します。

1.



月経先期(げっけいせんき)周期が20日以下で月経が来るものをいいます。周期が短くて、経血の色が深紅で粘っこく、量が多い場合は血熱証で、邪熱が迫血妄行して起こります。周期が短くて、経血の色が淡紅色で稀薄な場合は気虚で、固摂できないために起こります。気虚の場合、経血の量は多い場合と少ない場合があります。
   
2.


月経後期(げっけいこうき):周期が40日を超えて月経が来るものをいいます。周期が長く、経血の色が淡紅色で稀薄、量が少ない場合は血虚で、が不十分なために起こります。周期が長く、経血の色が暗紫色で経血中に血塊があり、量が少ない場合は寒凝で、寒邪を受けて血が凝滞したために起こります。
   
3.





月経前後不定期(げっけいぜんごふていき)月経が10日前後早く来たり、遅く来たり一定しないものをいい、月経衍期(げっけいえんき)ともいいます。周期が不定期で経血の量が少なく、経血の色が紫紅で血塊があり、量が少なく、乳房の脹った痛みを伴う場合は気鬱で、ストレスなどにより肝の調節がうまくゆかず、機能が乱れるために起こります。周期が不定期で量も一定せず、淡紅色で稀薄な場合は脾腎虚損で、任脈や冲脉が失調するために起こります。脾不統血では周期が短く、経血の量が多いのが特徴で、腎虚血虧では周期が長く、経血の量が少ないのが特徴ですから、この脾腎虚損では周期も経血の量も一定しません。

 

月経痛
月経前、月経中、月経後に発症する下腹部の疼痛行経腹痛(こうけいふくつう)といいます。月経周期と平行して発症するため経痛(けいつう)ともいいます。甚だしい場合には耐え難い激痛になることもあります。月経前に小腹脹痛を発症し、月経が始まると徐々に治まってくる場合は実証で、多くは気滞血おによるものです。月経後に小腹隠痛があって、腰の重だるい痛みを伴う場合は虚証で、気血不足か腎虚により子宮を通る経絡を養えないのが原因です。月経中に小腹冷痛があって、温めると軽減する場合は寒証で、寒凝血脈により、子宮の経脈が収引して痙攣するために起こります。

 

無月経
初潮を迎える年齢になっても月経が来ないものや、月経が来ていたものが3ヶ月以上来なくなったもの経閉(けいへい)といいます。問診では、妊娠、授乳期、閉経、もしくは暗経(あんけい)と呼ばれる排卵はするものの出血を見ない場合と、きちんと区別することが重要になります。因みに、日本語でいう閉経絶経(ぜっけい)といいます。

 

不正出血
月経ではなく、突然大量出血するもの経崩(けいほう)同様に長期間だらだらと出血するもの経漏(けいろう)といい、両者を併せて崩漏(ほうろう)といいます。経血の色が深紅で血塊のある場合、多くは熱証です。経血の色が淡紅色で血塊のない場合、多くは冲任損傷または中気下陥による脾不統血が原因です。

 

おりもの
おりもののことを帯下(たいげ)といいます。正常な帯下は、量が少なく、月経周期に合わせて透明から白色、淡黄色に変化します。しかし、量が多かったり、止まることなく流れ出たり、あるいは色、におい、質などが異常な場合、帯下病(たいげびょう)と考えられます。

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白帯(はくたい)白色で清稀、においがなく、量が多いのが特徴です。寒湿に属し、脾虚で運化ができないために寒湿下注したのが原因です。
   
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黄帯(おうたい)黄色で粘稠、汚く、臭いがあって、量が多いのが特徴です。湿熱に属し、湿鬱化熱により湿熱下注したのが原因です。
   
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赤帯(せきたい)赤色または赤白が混ざった色で粘稠、僅かににおいがあるのが特徴です。多くは情志不舒で肝鬱化熱し、婦人科に関連する経絡を損傷したことによります。
   
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絶経後に、月経があった頃のように赤帯が止めどなく出る場合は、癌などに起因する場合があるので、病院で精密検査を受ける必要があります。

妊娠
本来月経が正常な既婚女性が、突然月経が来なくなり、病気でもなく、脉が滑数冲和であれば、妊娠と考えられます。

妊娠中の女性で、食べることが不快で悪心、嘔吐があり、ひどい場合には繰り返し嘔吐して食べられなくなるもの妊娠悪阻(にんしんおそ)といいます。心身ともに疲れやすく、味がしなくて、お腹が脹る場合は、胃気素虚が原因で、妊娠したことにより気盛上冲して胃失和降するために起こります。抑鬱状態で怒りっぽく、口が苦くて、酸っぱい水を吐く場合は、肝鬱化火による肝火犯胃が原因です。お腹が気持ち悪くて食べられず、痰や涎を戻す場合は、痰濁上逆により胃失和降したことが原因です。

妊娠中に、下腹部が下に引っ張られるような感じがしたり、腰がだるく痛んだりして、出血を伴う場合は胎動不安(たいどうふあん)で、流産や早産の前兆といえます。顔色がどす黒く、頭暈耳鳴小便頻数があれば、腎虚により冲任脈を養えないことで起こります。顔色が白く精彩を欠き、心身が疲れている場合は、気血両虚により胎児を養えないことで起こります。外傷により腹痛や出血が見られる場合は、外傷を受けた際に冲任脈を損傷したことが原因です。

産後
産後に悪露による多量の出血があって12日以上止まらないもの悪露不断(おろふだん)といい気虚血熱血お、などが原因で起こります。悪露の色が薄くて稀薄、量が多く、顔色が黄色くくすみ、精神疲労があって体に力が入らない場合は、気虚下陥による不統血です。悪露の色が深紅で粘稠、量が多く、顔色が赤くてのどが乾き、便秘や尿の色が濃い場合は、血熱妄行によるものです。悪露が暗紫色で塊を含み、下腹部に刺すような痛みがあって触られると不快で、舌隠青またはお斑が見られる場合はお血内停によるものです。

産後発熱して熱が退かず、ひどいと壮熱になるものを産後発熱(さんごはつねつ)といい外邪内熱、陰虚生熱などが原因で起こります。発熱、悪寒、頭痛、身体痛などが見られる場合は表証で、感受外邪が原因です。高熱で落ち着かず、のどが渇いて冷たいものを欲しがり、便秘や尿が濃い場合は火邪内盛が原因です。微熱でなんとなく腹痛がし、頭暈、顔色が白い、大便乾結などの症状が見られる場合は、血虚化燥生熱が原因です。

小児に問う

小児の場合、本人に問診することは非常に困難で、尚かつ正確な判断が難しいので、病人である小児本人ではなく、両親や保護者を通して行うのが普通です。問診の際には一般的な問診の内容はもとより、小児特有の生理や病理についても合わせて尋ねる必要があります。

小児の生理的な特徴としては、臓腑嬌嫩(ぞうふきょうどん)生機蓬勃(せいきほうぼつ)発育迅速(はついくじんそく)などがあります。臓腑嬌嫩とは臓腑がまだ若く軟弱なこと、生機蓬勃とは生命活動に勢いがあって盛んなこと、発育迅速とは発育が早いことをいいます。

小児の病理的な特徴としては、発病較快(はつびょうかくかい)変化較多(へんかかくた)易虚易実(いきょいじつ)などが挙げられます。発病較快とは病気に罹りやすいということ、変化較多とは症状が変化に富むということ、易虚易実とは虚しやすく実しやすいということです。

小児にはこのような特徴があるため、小児の疾病には、的確な診断と適切な治療が重要になります。そして問診時には以下に重点を置いて尋ねる必要があります。

 

出産前後の状況

新生児とは生後一ヶ月までの赤ちゃんをいい、この時期に見られる疾病は、先天的なものか、分娩時の状況に関連があるものがほとんどを占めます。そのため、母親の妊娠中、授乳期の健康状態や栄養状態、お産の軽重、早産など出産について詳しく問診することが重要です。これらをしっかり訊くことではじめて、小児の先天の状況を判断することができます。

嬰幼児とは生後一ヶ月から満三歳までの小児をいい、発育が早く、多くの栄養を必要とします。そのため、食餌が不適切であった場合、栄養不良、五遅五軟、血虚証などの症状が現れます。そのため、小児の食餌や栄養状態、座る、這う、立つ、歩くなどの状態や、歯が生え具合、ことばの理解力などを尋ねることは、小児の後天の栄養状態や発育の状態を知る上で重要となります。

 

予防接種と感染症

小児は6ヶ月から満5歳くらいで受動免疫が消失しますが、能動免疫もまだ未発達で、尚かつ接触感染の機会も多いため、種痘や麻疹などの感染症に罹患しやすいのが特徴です。そのため、予防接種の状況、感染症の既往歴、感染症罹患者との接触などについて尋ねることが重要です。既にある種の感染症の予防接種を受けているか、あるいは罹患したことがあるにも関わらず、その感染症と似たような症状が見られたり、なかなか治らない場合は、その感染症に対する免疫ができていないか、最近になって罹患した患者と密に接触したなどを探ることができます。

 

小児の疾病の原因

嬰幼児の神志はまだ発育が不完全なため、驚きやすく、熱性痙攣を引き起こして、驚いて叫んだり、痙攣などの運動障害がよく見られます。また脾胃のはたらきも不十分なため、消化吸収力が低く、食傷を起こしやすく、嘔吐、腹瀉、疳積などの症状がよく現れます。この他、外界の環境への適応能力も充分でないため、外感病によく罹患します。

 

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