工房結の手仕事日記61-70
| 第61回 極めて個人的な芸術祭のススメ4 |
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夏真っ盛り。 これまでは芸術祭を中心に紹介してきましたが、ちょっと横道に逸れて……。今回は、私のお気に入りのスポットをご紹介したいと思います。 遠路はるばるお越し下さる方も大勢いらっしゃるでしょう。せっかく香川に足を踏み入れて、芸術祭だけではもったいない。香川は意外と見どころ満載なのです。日程が許すのであれば、是非、訪れてみてください。
まずは、現代アートにからんで、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館。この美術館は猪熊画伯が、建築家の谷口吉生氏と共に創り上げた、まるで美術館自体が「作品」として楽しめるような造りになっています。館内のインテリアも画伯が自ら選んでいて、どれもがとても素敵なのです。私は特にモダンな椅子がお気に入りで、訪れると必ず座り、心地よい気分に浸ります。 しかも常設展。ほとんどの企画展の観覧料が高校生以下無料というのも、粋なはからいですよね。若い頃から芸術に気軽に親しめるよう、という趣旨だと理解しています。余談ですが、私などは高校を卒業し、香川を離れたすぐ後にオープンしたので、とても悔しい思いをしました。しかし、それこそ極めて個人的ですが「香川に、こんな素敵な美術館がある。」ということを、とても嬉しく、誇りに思い、県外の美術好きの友人が遊びに来た時には、必ず案内している場所です。 ちなみに、JR高松駅から予讃線で一本、乗り換えなしです。JR丸亀駅を下車し、改札を抜けたら、目の前が美術館。別名「駅前美術館」と呼ばれるほど駅と近い!迷いません、便利です。時間的には半日くらい余裕がある方にお勧めです。 もう一つ。イサム・ノグチ庭園美術館も、いい空間です。彫刻家であり、インテリアデザイナーであり、造園家でもあり……と、様々な顔を持つ芸術家。和紙を使用した照明器具「あかり(Akari)」シリーズで、馴染みがある方が多いかもしれません。日系アメリカ人である彼の、日本での制作の本拠地が、ここ香川県の牟礼であったことから、美術館ができました。 イサム・ノグチ氏のファンの方はもちろん、よく知らない方でも、作品として、庭園として、純粋に楽しめる場所だと思います。彫刻も家具も明かりも、どれも有機的なフォルムで、なんとなくユニーク。動き出しそうな石、広がりを感じさせる空間。私は、ノグチ氏の作品を見ていると、おおらかな気持ちになれます。皆さんにも味わって頂きたい場所です。 ただ、入館が一日3回の予約制の為、事前に往復葉書での申し込みが必要となりますので、ご注意を。詳細はHPを御覧下さい。 さて、これも一つの芸術でしょう。香川には、国指定特別名勝である、栗林公園があります。江戸時代初期の回遊式大名庭園の造りだそうです。ここは、四季折々の景色が非常に美しく、どの場所も絵になる景色に仕立ててあり、広いのですが間延びせず、飽きることがありません。知人なども、年間パスポートを購入し、散歩がてら日々楽しんでいるそうです。そうそう、この公園はミシュランの観光版「ギード・ベール」日本編で、最高評価の三つ星に選ばれています。三つ星の基準は「わざわざ訪れる価値のある場所」だそう。他には、富士山・姫路城・法隆寺・日光などが、認定されています。百聞は一見に如かず、是非ご覧ください。園内散策所要時間は、人それぞれですが、最低でも2時間はみておいて下さいね。 それでは、皆様、良い旅を! |
| 第62回 極めて個人的な芸術祭のススメ5 |
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今年はとんでもなく暑い夏でしたね。 いつもの小豆島の夏は、カラッとした暑さで、比較的過ごしやすいのですが、今年は違いました。まるでサウナの中に居るような、熱気と湿度。普通に道を歩いているだけで、のぼせて倒れそうな不快指数120%の日々が続き、本当に危うい暑さでした。 今は、8月ほどの暑さではありませんが、これから小豆島を訪れようという皆様、棚田には日陰がありませんので、帽子、日傘、飲料水等はお忘れなく! 9月に入り、いよいよ芸術祭も終盤戦に差しかかろうか、という所。今回はお土産物について、紹介したいと思います。 この瀬戸内国際芸術祭が、開催されるにあたり、瀬戸内地域の名産品の、新たなパッケージデザインが公募されました。その名も「リデザインプロジェクト」。 讃岐うどん、丸亀うちわ、しょうゆ豆、和三盆etc...。580点を超える応募作品のなかから、計27点の名産品が、アートなパッケージに生まれ変わり、製品化されました。どれも素敵なデザインで、芸術祭のお土産にはもってこいです。 ここ小豆島では、「オリーブサイダー」、「特選丸大豆醤油」がリデザインされています。 「こまめ商店」、JR高松駅前の「高松マリタイムプラザ 1階特設ショップ」や、各地お土産物店、デパートなどで販売されていますので、是非お気に入りの商品を見つけて下さい。 先日、友人を案内がてら、ちょっとひと休み…と、宣伝を兼ねて、オリーブサイダーでお茶をしました。定番のオリーブ味に、ビール風味とワイン風味が、新たに仲間入りしたのですが、わたしは定番をチョイス。ほのかな苦みがあり、後味がすっきりしていて、暑さにバテ気味の身体に沁みわたりました。友人は旅の記念にと、空き瓶を持ち帰っていましたが、その後どうしたかな?と、気になっています。思い出と共に、部屋に飾られているのでしょうか……? また、自分なりのお土産セットを、勝手にプロデュースして楽しんでみては如何でしょうか? 例えば、讃岐うどんとお醤油を組み合わせて、「夏のお昼ごはんセット」。茹で上がったうどんを、キュッと冷水で締めて、お醤油をツーっとまわしかけて頂くと、麺のコシと、醤油の風味が楽しめますよ~、と言いながら、手渡してみたり。地酒とうちわの「夕涼みセット」。縁側で涼みながら、一杯どうぞ、など、色んなバリエーションが出来そうです。 さて、ここまでは「リデザイン製品」について、紹介してきましたが、最後に一つ、ぜひとも紹介したい商品があるのです。 7月末、直島へアート観賞に行った時のこと。ベネッセハウスのミュージアムショップで、とても風流な一品を見つけました。讃岐の名産である和三盆糖を使った干菓子なのですが、シンプルに白と茶色だけを使い、貝殻を模してあるのです。それが、そのまま浜辺から拾ってきたかのような、良い出来で、しかも美しい!夏のお茶会で、こんなお菓子が出てきたら、波の音が聞こえてきそうで、涼やかな心持になれそうです 残念ながら製造・販売ともに、香川県産ではありませんでしたが、アート作品を見るようでした。 今回の画像は、その商品です。直島を訪れたかた、是非本物をご覧になり、びっくりして下さい。 |
| 第63回 極めて個人的な芸術祭のススメ最終回 |
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10月ですね。芸術祭終了まであとわずかとなりました。皆さん、芸術祭は堪能出来ましたか?今から駆け足!という方、頑張ってください!!まだ、遅くはないですよ。 目安では、小豆島1日、女木島・男木島のセットで1日、豊島が1日。直島は、特に芸術祭期間中に行かなくても、いつでも観賞出来るので、後回しにしても構わないというのが、私見です。ただ、パスポートを持っている方は、直島の美術館観賞料が、かなりお得になるので御一考を。犬島・大島は、まだ行けていないので、何とも言えませんが……。 さて、小豆島の住民である私も、来客があるたびに、芸術祭を案内して島内を回りました。 そこで人気があった作品を、締めくくりとして、紹介しようと思います。 まず、圧倒的な支持を集めたのが、王文志氏の「小豆島の家」です。これは、大人から子供まで、人気がありました。なにせ、その規模の大きさが目を引きます。中山へ向かう道を、車で走っていると、突如現れる巨大な竹の家!「わっ!何?あれ。」「凄い。タージマハルみたい。」と、皆一様に驚きます。しかも、中に入ると、靴を脱いで、竹の床に寝転がることが出来ます。寝転がって天井を見上げると、複雑に編まれた竹の隙間から、光が差しこむ様が美しく、いつまでも眺めていたくなるような、作品です。加えて、涼しく居心地が良いので、ついつい長居をしてしまい、予定時間が押してしまうこともしばしば。「もうこれで十分堪能した。」と、他の作品は巡らずに、小豆島を後にした人も居たほどでした。
海辺に展示されている、スゥ・ドーホー氏の「Net-Work」も、興味深く見てまわっている方が多くいました。一見、地引き網を干しているように見えるのですが、近づいてよーく見てみると、万歳をした無数の人間(の形をした人形)が繋がって、出来ているのです。よくよく見ると、時々逆さまになっている人間がいたり、色が違ったりと、間違い探しをしているようで、結構面白い作品だと思います。 観賞する人の数だけ、作品に対する感じかたも、また様々ですので、偏りがあるかと思いますが、以上が比較的反応が大きい作品でした。 一方で、何度も回っていながら、まだ一度も本当の姿(?)を味わえていない作品もあります。中山地区に展示されてある、ダダン・クリスタント氏の「声なき人々の声」です。竹に開けられた穴に、風が通ることにより、様々な音色が醸し出される。という作品なのですが……。やや強い風でないと、音が出ないようです。私が訪れた時は、いつも無風か、そよ風程度でしたので、残念ながら、観賞しきれていません。今から、台風シーズンですので、これから巡る方、チャンスかもしれませんよ。 ざっと紹介しましたが、今から駆け込みで芸術祭を巡るかた、御参考まで。 これまで6回にわたり、極めて個人的な視点で書かせて頂いた、芸術祭のススメも、今回で最終回とさせて頂きます。お付き合い下さいました皆様、有難うございました。 |
| 第64回 芸術祭後記 |
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「アートと海を巡る百日間の冒険」と銘打った芸術祭も10月いっぱいで終了しました。 会場となった島民の皆さん、こえび隊で活動された皆さん、その他、芸術祭の成功に向けて頑張ったすべての方に、「お疲れ様でした」という言葉を、贈りたいと思います。 初めてのアートの祭典。しかも、現代アートという分野で、島内では、当初「いったい何をするの?どんなことが始まるの?」といった戸惑いが多く見られました。が、来場者数も増え、後半にさしかかった頃から、「現代アートって結構面白いね。」とか「豊島は良かった。犬島も是非見ておきたい。」など、島のなかでもあちらこちらで、芸術祭の話題が上るようになってきました。 実は、期間前半の小豆島は、ガラガラでした。地元でさえ、アートめぐりをしている人は少なかったと思います。「直島ぐらいじゃない?みんな行きたがるのは。」と、どこか他人事のような感じだったのですが、後半の盛り上がりは凄かった!棚田に観光客と島民が溢れかえり、「こんなに沢山の人がいる中山を見たのは初めて!」と驚いたほど。最後になって「こんなに面白いのであれば、もっと早くからあちこちを見て回っておけば良かった!もう時間が無い。」と、悔やんだ方、多かったのではないでしょうか。芸術祭に対する興味が沸き、現代アートへの壁が、ようやく取り除かれつつある時に、終わりを迎えたという感じがしました。 そうそう、ひとつ書き忘れてはならないことがあります。 豊島美術館は、閉幕間近の10月17日にオープン。その為、最後も最後、10月の最終週に豊島を訪れました。私にとって、実に12年ぶりの豊島は、美しく変化しつつありました。小豆島の業者さんが、豊島で棚田を造成していると、聞いていたのですが、ちょうど豊島美術館がある、高台周辺に作られていたのです。まだ、途中なのですが、棚田1枚、1枚に花が植えられており、ああ、ここはいずれ、花が咲き乱れる、美しい丘になるのだな、と、想像すると胸がいっぱいになりました。かつて、ごみの島として名高かったこの地が、美しい自然とアートで再生されていく。その様を目の当たりにし、これまでの長かった道のりを思うと、感慨深いものがありました。 さて、豊島美術館は、90分待ちで入館。感想は人それぞれでしょうが、私は想像だにしていなかった空間に、心を奪われました。個人的にはとても良かったです。見てのお楽しみということで、詳しくは書けませんが、お勧めします。オープンが遅かったこともあり、年内であればパスポートで入館出来ますので、是非訪れて見て下さい! 最終日に発表された来場者数は、当初の目標30万人の3倍にあたる約93万8千人。小豆島は10万8128人で、3番目でした。 成功した。と、言っていいのでしょうね?現に、香川県は、3年後の開催を検討していると、発表しました。しかし、芸術祭公式サイトの中にあるブログを読んでいると、様々な課題が浮き彫りになってきて、ただただ単純に喜んでばかりはいられないな……とも、思います。 島民の足である船は、期間後半、積み残しが出るほどの混雑ぶりでしたし、設置場所の条件が悪く、鑑賞する人を選ぶであろう作品もありました。例えば、小豆島の一番人気だった王文志氏の「小豆島の家」は、急勾配のあぜ道を、かなりの距離を下っていかなければ作品に辿りつけません。また、作品の中に入る回廊のような部分も、竹を編んで作っているためガタガタと足場が悪く、これでは足が不自由な方、車椅子の方は、困難だろうなと感じました。実際、バリアフリー作品の情報提供や、スタッフの方々の補助等あったらしいのですが、芸術祭開幕時には準備されていなかったそうです。また、大混雑のなか、男木島を訪れたのですが、狭い路地は観光客で溢れ帰り、生活道路がずっと交通規制されているような、不便さを強いられてはいないだろうか?と、心配になりました。島のおばあちゃんは、とても気さくで親切でしたが……。 小豆島は、その広さゆえに、作品が散らばり過ぎて、足が無い人には不便だったのではないかと、思いました。せっかく芸術祭線のバスが走っているのに、時間帯が悪いのか、いつ見てもガラガラに空いていたのも、気になりました。挙げていけばキリがないのですが……。 ともかく、3年後。再び開催されるであろう芸術祭を、私は応援していきたいと思います。時間と体が許せば、次回はボランティアスタッフとして、少しでも関わりたい。そう思っています。 最後に、島外から足を運んで下さった皆様、瀬戸の島々はいかがでしたか?お疲れさまでした、そしてありがとうございました。 |
| 第65回 データの大切さ |
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気がつけば、もう年の瀬を迎えようとしています。 今年は、私にとって「2つのこと」が、大きなテーマになっていました。ひとつは「瀬戸内国際芸術祭」に、参加すること。そして、もうひとつは「身体と向き合う」こと。 芸術祭に関しては、この日記にも、ずっと綴ってきましたので、どれだけ私の心を占めていたかが、わかっていただけると思いますが……。「身体と向き合う」というのは、一体何をしたのでしょうか?そのことについて、今回はお話しようと思います。 さて、私、三木尚子は、今年の頭から「泰生堂大学漢方診療科」に、入学致しました。そして、この一年間、問診&治療をうけながら、自分の身体を見つめ直す作業をしているのです。実は数年前にも、酷く体調を崩し、根本的な体質改善の余地あり!と、入学を希望し、3年間在籍した後、めでたく卒業の許可を頂いたのですが。出来が悪く再び勉強の余地あり、と、また舞い戻って来たのでした。ちなみに「泰生堂大学漢方診療科」とは、私が勝手にそう呼んでいるだけですので、あしからず。 せっかく良くなった体調を、また崩してしまったのは、痛恨の極みなのですが、まあ人生色々ありまして。日々の暮らしの中で、少しずつ蓄積されてきたものに、気がつかず……。「これが普通」と、思っていたら、いつの間にかとんでもなく「普通」の状態とかけ離れたところに、来てしまっていたりします。 再入学して、与えられた課題は、「顔と舌の写真を撮る」ということでした。定期的に撮ったものを、データとして保存しておくと「比較」や「変化」が、自分でわかりやすい、という理由からです。そんなわけで、ひたすら一年間、顔と舌の写真をとり続けたのですが、2~3週間前の写真と比べ見ることはあっても、改めて一から写真を見直すという作業は、していませんでした。データBOXが自分の顔と舌のどドアップ写真だらけなんて、ぞっとしないでしょう?それに、今日はちょっと疲れているな、最近顔色いいな、など、変化はなんとなくわかります。毎日見ている自分の顔ですもの!……と、思っていました。 そう、思っていたことが、大きな間違いだったのです。 つい先日のこと。ふと何の気なしに、入学してから初めて撮影したデータを開いてみました。ギョ、ギョッ!!「誰?この疲れたおばさん?!」目に光が無く、顔全体の皮膚がなんとなくダラーっと下がり、空気がよどんだ感じ。慌てて、最近の顔写真を比べてみると、別人かと思うくらい、その印象が、実年齢より5歳くらい老けて見えるのに、驚きました。そこで、時間軸に沿って、ずーっとデータを辿っていくと、違う、違う、チガウ!明らかに。季節を追うごとに、体調の浮き沈みに沿って、顔色が良くなったり、くすんだり、むくんだり。この暑い夏に耐えられず、食べられなかった時の顔は、ガリガリで女っ気ゼロ。こんなに酷いとは思わなかった……、どうりで何を着ても、きれいに決まらなかったハズだ……と、独り言ちました。 今でも鮮明に覚えています。最初の講義(問診)で、件の写真を見ながら、たしか教授(大川先生)は、こう仰いました。「うーん、目がどろんとしていて、全体的に疲れた感じで、顔色がくすんでいます。顔の皮膚が、こう、全体的に下方向にダラーンとしていて、ちょっと今の三木さんの年齢より老けた印象がするね。あっ!これは、決して、たるんだというわけでは無くって、持ち上げる力がない状態だから、心配しないで下さい。元気になってきたら、また、変わってきますから云々……。」そして、私は「ええ?!いつもの顔なのに、そんなに老けてるの?!!!」と、ショックを受けたのです。 しかし、今改めて見てみると、当時「いつもの顔」と思っていた顔は、「疲れ果てた、元気のない顔」だったのです。 自分の記憶の曖昧さに驚き、客観的に見ることの大切さに気がつかされた一件でした。 そういえば織作業、藍染、草木染め、どれも簡単なデータは残すようにしています。もう一度、同じ物を、と注文を受けることが時々ありますが、やはりとても役立ちます。ただ、染めに関しては、植物のもつ力や、灰汁の成分など、基本とする部分が、ひとつとして同じものがないので、データに頼りすぎてもいけませんが、だいたい困ることはありません。 記憶や感覚に加え「記録」を残しておくと、たいへん役に立ちますね。もっとも改ざんされると、お手上げですが(笑) それでは皆様、良いお年を。 |
| 第66回 年末の風景 |
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年末から新年にかけての慌ただしさが、やっと過ぎ、平和な日常が戻ってきました。 皆さんは、年賀状を出しますか?それとも出さない?またはメールで?……通信手段が多様になり、選択肢が増え、お年賀の挨拶の形もずいぶんと変化しましたね。 元旦の楽しみは、なんといっても「年賀状」という私ですので、自然と年賀状づくりには力が入ってしまいます。今では、パソコン全盛期で、写真も加工もなんでもござれですが、パソコンが今ほど普及していなかった時代。我が家の、年末の一大イベントは、版画づくりでした。 今回は、そんな「年賀状」にまつわるお話を。 私が生まれ育った家は、必ず「暑中お見舞い」や「年賀状」を、書き送る風習がありました。年賀状に至っては、両親・姉・私が、皆それぞれに、版画を彫って作るのが、恒例となっていたので、「私は、もう図案が決まった」だの「お父さんは、今、何版まで摺りあがった」だのと、それはもう大騒ぎでした。今思えば、誰かが代表で一つの版画を彫り、手分けして摺れば能率もよかったのですが、そこが一筋縄ではいかないところ。「自分の作品」を作るのだ!と、皆で競い合うように作っていました。 彫刻刀の扱いが上手く器用な父は、繊細な模様をシュッシュッと、素早く彫っていきます。子ども心にその彫り目が美しくて、羨ましくてしょうがなかったことを、今でもよく覚えています。また、普通の小学生が使う「彫刻刀セット」はせいぜい平・丸・浅丸・三角・印刀の5種類でしたが、母が讃岐彫りをしていたお陰で、道具には不自由せず、丸刀ひとつを取っても、大小様々な種類を選んで使うことが出来ました。それなりに良い彫刻刀は、切れ味も良く、余計な力もいらず、気持良く彫ることが出来ます。道具によって、少なからず出来栄えが左右される、ということも、そこから学んだような気がします。 せまい一間に集まって、それぞれが自分の版画を作りながら、「ここはこの道具を使って彫ったらいいんだよ。」と教えてもらったり、色合わせの相談をし合ったり。下手な使い方をして指を切り、大騒ぎしたりしながら、「元旦に間に合うかな~?」などど、ワイワイ言いながら過ごす。その慌ただしさが、いかにも「年の瀬」という感じでした。もっとも強烈に印象に残っているのは、小学生の時分。初めてづくしで、印象深かったのでしょうか。私のなかでは、年末といえば、この光景が思い出されるのです。 私が嫁ぐまでの30余年、途中でパソコン印刷の時代がやってきましたが、相も変わらず、毎年版画を彫り、同じようなことを繰り返していました。アナログ一家は、あくまで自分の手を動かし、年賀状を作り、宛名も自筆で、というこだわりがあったのです。……パソコンが得意な人が、誰ひとりとして居なかった、という現実もありますが。 そのうち、姉が嫁ぎ、私が嫁ぎ……と、実家は両親だけとなり、恒例であった年末の風習も終わりを告げましたが、幼少期から「年末は必ずこれをする」という、とても貴重な経験をさせてもらったと思っています。 私も、新しい家族では、パソコンで「一家の年賀状」を作るようになりました。ただ、必ず宛名は自筆で。そして、短くとも一言は添えるようにしています。 因みに、今だに「アナログ」な木版画を貫いているのは、父親だけとなりました。400枚以上の葉書を、4~5版摺るのですから、大仕事です。今年こそきっぱりやめよう、楽なプリントにしよう、と思いつつ「毎年、どんな版画の年賀状が届くのか、楽しみにしている。」という声に後押しされ、2010年の年の瀬も、いつもと変わらず、シコシコと、懸命に摺っていました。元旦に届いた葉書を眺めつつ、その姿が、三木家の懐かしい思い出そのものだなあ、と、感じた新年でした。 |
| 第67回 雪の京都へ |
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1月、大寒が目前に迫った週末に、京都へ行ってきました。 滅多に県外に出ない私ですが、たまに目的を持って「動こう!」という時、何故か必ず天気も動くらしく……。 今回も、年末以来の大寒波が日本列島を襲い、各地で交通パニックが起こった時期に、ばっちり重なってしまいました。ちょうど世間は、大学入試センター試験が各地で行われていて、受験生の方々も、肝を冷やしたのではないでしょうか。 思い返せば、昨年9月に東京へ行った際は、局地的なゲリラ豪雨に遭いびしょ濡れ。新婚旅行で楽しみにしていた沖縄行きも季節はずれの台風直撃で、滞在中はずっと雨または強風でした。今でも「沖縄といえば……。」と、語り草になっております。 まあ、だいたいこんな具合ですので、「またか」と、半分あきれつつ、防寒対策ばっちりに荷造りして、臨みました。 京都は、時々訪れますが、冬は今回が2回目。旅はやはり、良い時期を選んで行きたいですよね。桜満開の雅やかな春、清流ほとばしる夏、紅葉で情緒あふれる秋、そんな古都なら大歓迎です。冬も雪景色なら一度は観てみたいな、とは思っていましたが、雪の無い京都なんて、ただただひたすら寒いだけじゃないかと、避けていました。ですから、今回は用事があるのでやむなく、といった具合でした。 それが、です。なんと大雪警報発令!交通事情を気にして、前泊で京都に入り、一夜明け。「雪、ちらほら降ってるかな?まさか本当に、一面雪景色だったりして。」と、ホテルのカーテンを開けると、そこは一面の銀世界でした。計らずも、雪の古都を体験することとなったのです。 雪の京都は「美しい」の、一言に尽きました。 かの清少納言が、「冬はつとめて。雪の降りたるは、いふべきにもあらず。(枕草子 一段)」と、評したように、まだ踏み荒らされていない、しん、と静まり返った早朝の景色は、時間が止まったように美しく。「まいったなあ」という気持ちは、どこかに吹っ飛んでしまいました。 お寺も、お庭もすっぽりと、雪をかぶり、いつもと違う趣。赤い鳥居は、雪に映え、南天は重さでたわみ。着物姿のご婦人を、時折見かけ……、宮沢りえちゃんと、もっクンの「伊衛門はん」の世界だわ~、とミーハー気分満載で、カメラ片手にそぞろ歩きしておりました。 目的地の嵐山は、さらに雪深く。何組かの観光客が「まさかこんなに降るとはね~。」などど、言い合いながら、何故か皆、嬉しそうな顔をして、やはりカメラでパチリ・パチリ。困ったというよりも、嬉しさが先にたっているような様子。そう。寒い京都旅行に、花ならぬ雪を添えて貰い、想定外の贈り物を貰ったような……ちょっと得したような、感じでした。 さて、京都行きの目的は、手描き友禅作家であり、天然染色研究家である、高橋裕博(たかはし やすひろ)氏の展示会を観ることと、ご本人にお会いすること。 高橋氏は、近代染色(江戸、桃山、各時代)遺品の小袖の復元に取り組まれ、古来からの天然染色技術に、たいへん造詣が深い方です。現在の友禅といえば、ほとんどが化学染料で染められているなか、100%天然染料で制作に取り組んでいらっしゃる、貴重な存在です。 藍染めは、師を持つ私ですが、草木染めにおいては、まだまだ頼りなく。技法書を頼りに、悩みながら経験を積んでいくという作業を繰り返していました。高橋氏は、そんな私の様々な疑問に、ひとつひとつ丁寧に答えて下さいました。 雪景色でリフレッシュし、多くの収穫を得た古都の旅でした。 |
| 第68回 目指すところへ | |
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ひときわ寒かった冬も過ぎ、春めいて参りました。 嬉しい!!……春は、やはりうきうきとするものです。あまりハイテンションになり過ぎるのは、中医学的に理由があり、よくないらしいのですが(詳しくは、大川商店様HPの中医基礎-臓腑学説・肝を参照)、やはり華やぐ気持ちは抑えられないものです。 私にとっての、その最たる例が、化粧品です。シーズン毎にアイシャドーや口紅の新色が出ますが、春になると新色を買いたくなってしまいます。秋から冬には、何故か新調しようとは、思わないのです。やはり、寒くて縮こまって、はやく暖かくならないかなあ、春が恋しいなあと、思いながら冬を過ごすせいでしょうか?暖かくなってくると、さあ、重い衣料を脱ぎ捨てて、足取りも軽やかに、口紅の新色でも見に行こうか、ヘアースタイルも変えようか、という気分になって来るのです。 そんな訳で、先日、行きつけの化粧品店へ行ってきました。 このお店、手仕事日記の第14回でも登場しましたが、某大手化粧品メーカーの商品を中心に扱っています。椿の良い香りがするヘアケア商品でもおなじみ……と、言えば大体察しがつくと思いますが。私は、基礎化粧品からメイク用品まで、この会社の物を愛用しているので、よくお店に通います。 化粧品を選びながら、なんだかんだと他愛もないおしゃべりをして……、これが結構ストレス発散になり、楽しいひと時なのです。そんな何気ない会話から、先日はふと「お手入れ用のコットン」の話題になりました。 私には、そのメーカーで、ずっと愛用しているコットンがあるのですが、実は、今までに何度か他の商品に浮気をしたことがあるのです。ある時は、お金をケチって、スーパーで、4分の1くらいの値段の物を買ってみたり、またある時は、ちょっと良さそうで、お値段も少し安い、ドラッグストアのコットンを購入してみたり。浮気の理由は様々ですが、いつも、使用した瞬間、「あっ!失敗したー!!」と、後悔することになります。 とにかく、使い心地が全く違うのです。まず、使用中によれる、毛羽立つ。そして、何より「痛い」!肌にコットンを滑らせるたびに「あ、痛タタタ!」しかし、買ってしまったものは、しょうがない。勿体無いので、最後まで使い切らなくっちゃ、トホホ……。 「……という訳で、やっぱり“いつもの”に戻ってしまうのよ。」 と、美しい美容部員さんに、お話したところ、ぱあっ!と、表情が輝き、誇らしげに、こう答えました。 「そうでしょう?!こだわり抜いて作られた商品なんですよ。100%天然綿で、水で編まれているんです!」 ナヌ?水で編まれている?それってどういうこと?と。よくよく聞いてみると、「スーパーウオータージェット製法」といって、水で繊維を絡ませ、編むことにより、毛羽立ちや、よれを防ぐのだそう。また、使用している綿も、国際規格である「エコテックス スタンダード100」の最も厳しい条件「製品分類Ⅰ(赤ちゃんの肌にも使える)」を、クリアしているとのこと。そのため、使い心地も優しく、安全性の高い、お肌に優しいコットンとして、自信を持ってお薦め出来るのだそう。 感心しながら、お店を後にし、数日後。ドラッグストアに用事があったので、早速、コットンチェックをしてみました。……すると、「水で編んであります」と記してあるものや、「エコテックス」の認定マークが、ついているもの、結構あるのです。あら、特別なことかと思ったら、そうでもないみたいなのね。と、ちょっとガッカリ。でも、使い心地は確かに違うのです。何故かしら?と、それだけを聞きに、また化粧品店を訪ねました。 まあ、面倒なお客だわね、と自覚しながらも、気になるものは、しょうがありません。実は…と、疑問を投げかけると、面倒な顔ひとつせず、沢山の資料をパラパラと示しながら、さらに丁寧に説明をして下さいました。 「確かに水で編まれているコットンは、他にもあります。しかし、我が社はその『水』にも、こだわっているんですよ。」 直接お肌に触れる、デリケートなものなので、コットンを製造する工場を、なんと、広島の水がきれいな山奥に、わざわざ造り、湧き出る天然水で編んでいるのだそう。 「コットンも、エコテックスマークがついている商品は多々ありますが、その「綿」を、どう製品に活かしていくか、で差がでてくるんです。」 非常に繊細でソフトな肌触りの「スーパー長繊維綿」・なめらかな肌あたりの「長繊維綿」・吸水・放出力に優れる「中長繊維綿」の3種類の綿をブレンドすることによって、化粧水や乳液の含みが良く、且つ、良い肌感触を追求しているのだそう。そういえば、繊維カタログを見ていても、確かに、長繊維を使用した、糸は手触りも良く、高級なものとされています。 また、一番使いやすいサイズを研究し、私が使っている間にも規格サイズが、0.5㎜変わりました。他社のコットンを色々と試したことがないので、断言出来ませんが、この会社のコットンはとても指に挟みやすく、使いやすいのです。 色々と伺っていると、こんなちっちゃい、一枚3.4円位のコットンに、素晴らしい企業努力!と、感心しきり。しかし、よくよく考えてみれば、朝、晩のお手入れに必ず使うコットン。いくら肌触りのよいクリーミーな乳液を使っても、コットンの使い心地が悪ければ、それだけで正当な評価が得られず、どちらの商品評価も下がってしまうことになります。すべてを、極めて、ほころびを無くし、総合的にレベルの高いものになり、はじめて「評価される」のだ、と、当たり前ですが、改めて気がつかされたのでした。 大手の名のある会社だからこそ、さらに極みに向かって、突き進んでゆくのでしょう。 染織の分野に当てはめてみても、せっかく天然染料を使っているのに、その色を活かしきれない糸を使っているだとか、糸は良いのに、織りが今一つ。または、生地は良いのに、仕立てが雑。仕立てまでは良いのに、仕上げがきっちりと出来ていない。などと、言われないように、より良いところを目指していかなければ、と、再び強く思った一件でした。
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| 第69回 黒米は楽し |
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今、我が家では「黒米」がブームです。 きっかけは、何かとお世話になっている【泰生堂薬局】様から「古代米&16種類の雑穀米」の、お試しセットを頂いたことから。 黒米の存在は、知っていました。 しかし、それは染色材料としてでした。出会いは、織姫制度で入村した、昭和村でのこと。黒米を栽培している方から、結構な量を分けて頂いて、惜しげもなく使っていました。お米だけれど「食べてみよう」などと、当時はこれっぽっちも思いませんでした。あくまでも「染める材料」としか見ていなかったのです。・・・・・・もったいないことをした!と、今となっては悔やむばかり。ちなみに、煎じた液は、紫がかった美しいピンク色で、他の赤系統の染材では出せない、ちょっと種類の違う色が染められるので、重宝していました。 無知とは恐ろしいもので、昭和村を離れた後、いざ黒米で染めようと思った時に、易々と手に入らない物だということに、その時初めて気がつきました。そもそも身の回りで栽培している人が居ないのです。健康食品会社から購入を考えた時、結構良いお値段だということがわかり、「昭和村では、贅沢な使い方をさせてもらっていたなあ。」と、今更感謝したのでした。 そこから、10年以上もパッタリと、黒米の存在を忘れかけていた頃でした。例のお試しセットを頂いたのです。 そこで、2度ビックリ!黒米は「薬米」と言われるほど、栄養価の高いお米である、ということを知りました。蛋白質、ビタミンB1・B2・E、ナイアシン、鉄分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、食物繊維が白米よりも多く含まれ、更に動脈硬化予防・抗酸化作用のあるアントシアニンが、豊富に含まれているとのこと。 「えっ!?これって、あの黒米のこと?染色にじゃんじゃん使ってた、あれが?」ひゃーっ!勿体無いことをした!!と、びっくりです。 ・・・・・・で、食べてみました。炊きあがったご飯は、白米がほんのり紫がかったピンク色に染まり、かわいらしい。なんだか目出度い気分になります。味はというと、これが、もちもちしていて美味しい。白米のなかにプチプチと弾ける食感がなんとも言えず、ハマリます。食べ応えがあり、しばらく黒米入りご飯を食べた後、白米のみのご飯を食べると、物足りないような気分になります。お米大好き!な、我が夫も「美味い!これ、癖になる。」と、高評価。あっという間にお試し黒米は無くなり、急いで1kg分購入したのでした。 さて、どんなメニューが、その食感をさらに活かし、美味しく頂けるのか?黒米を導入してからというもの、お米メインの料理を色々と試してみました。炊き込みご飯・ピラフ・チキンライス・ハヤシライス・親子丼・中華風あんかけ丼・オムライス・チャーハンetc……。 そこで極めて個人的な感想なのですが、トマトベースのものは、特に黒米を入れなくても良いかな~?という、印象を受けました。トマトと黒米の相性はそんなに良くない気が……。しかし、ふわふわ、とろとろっとした、丼ものには、黒米が活きますね。あまり咀嚼せずに、つるっと食べてしまいがちになるのですが、プチプチ感がアクセントとなり、良い感じ。また、満腹感も得られます。逆に、期待した割に、特に変化を感じられなかったのが、炊き込みご飯。もともと入っている具の食感があるからでしょうか? そんななか、抜群に相性がよかったのが、カレーライス!!夫と二人で「美味し~い!」と、思わず顔を見合わせました。白米のみで頂くよりも、はるかに美味しい気がします。もともと、カレーの時は白米を固めに炊いていましたが、黒米が入ると、その必要無し。黒米のプチプチもっちりのアクセントがありながら、白米はほどよくふんわりしていて甘く。2種類のお米の良いところが、カレーのルーに凄く合って、倍美味しい!理由は何なんでしょうね?あのスパイシーさと、相性が良いのでしょうか?今のところ、我が家のNo.1メニューです。 他にはどのような黒米のメニューがあるのでしょうか。世の中には、黒米愛好家が大勢居るはずだ、とネットで検索してみたところ……、私の目にとまった限りでは「黒米カレー」の支持者が、結構いらっしゃいました。あっ、あなたも?と、ちょっと嬉しい気分です。また、黒米入りのパンを焼いている方、クッキーなどお菓子の材料になさっている方も。わあ、あれもこれも、試してみたい~♪と、ここのところ、ひとりで盛り上がっています。 染めて良し。食べて良し。健康にも良し。本当に黒米は楽し。 |
| 第70回 八日目の蟬 |
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唐突ですが、皆さんは、ご自身のふる里を説明する時、どのようにして伝えますか? 私は、まずは「瀬戸内海に浮かぶ、小さな島で…、二十四の瞳の映画の舞台になった、小豆島です。」と、説明します。これで、ある世代以上の方々は、「ああ!高峰秀子主演の!」とか「良い映画だよね、涙しながら観たよ。小豆島も訪れたことあるよ。」と、すぐにわかってくれます。しかし、若い世代になってくると、今一つピン!と来ないらしく、「二十四の瞳……ですか?うーん、知らないです。」と、言われるのがオチ。「オリーブの栽培が盛んな…」とか、「瀬戸内国際芸術祭の会場のひとつだったんだけど…」など、色々キーワードをだしながら、説明していかないと、なかなか伝わらないこともあります。 映画「二十四の瞳」と言えば、昭和の日本映画界の大スターと言われた、高峰秀子さん演ずる大石先生と、12人の生徒との心の交流を、反戦のメッセージとともに描かれた名作。大体昭和30年代くらいまでの方々でしょうか、この映画を引き合いに出して、通用するのは。懐かしい眼差しで、映画の感想を語って下さいます。 その、高峰秀子さんも、昨年末にお亡くなりになって、ますます昭和が遠き、小豆島の印象もぼやけ……。もはや、なにを一番の決め手として、語ればいいのか、困っているところでしたが、この度、新たに小豆島を舞台にした映画が完成しました! 『八日目の蟬』です。
4月29日(金)から、全国ロードショー。直木賞作家である、角田光代氏のベストセラー小説『八日目の蟬』の映画化作品です。そろそろ封切りから1ヵ月経とうとしています。もう御覧になった方、大勢いらっしゃることと思いますが、映画版『八日目の蟬』は、いかがでしたか? ロケ地に住む人間としては、やはり映画が好評だと嬉しいですし、ヒットして欲しいなあ、と思う訳ですが……。それと共に、大好きな、小豆島の良さや美しさも、余すことなく伝わって欲しい!と、心の底から願っているのです。 私がこの作品を知るきっかけとなったのは、壇れいさん主演のテレビドラマでした。「小豆島でロケ、やったみたいよ。」と、聞き、てっきりロケ地になっただけだろうと思っていましたが、ほんとうに小豆島が作品の舞台になっていると知って驚きました。 なぜ「小豆島」を、舞台に選んでくれたんだろう?角田光代さんは、どんな風に小豆島を描いてくれているのだろう?と、そんな興味もあり原作を読んだところ、決して、饒舌に語っているわけではないのです。ただ、シンプルに「海と、空と、雲と、光と、木と、花と、きれいなものぜんぶ入った、広くて、大きな景色」(八日目の蟬より、抜粋)と。また、テレビドラマでは最終回で「光の島」と、表現されていました。 確かに、そう。そうなのだけれども、それを表現するのは、本当に難しいことなのだな、と、映画を見て実感しました。 助監督である猪腰氏が、島民先行上映会での舞台挨拶の時、こうおっしゃっていました。映画がクランクインする数か月まえから、島に滞在し、小豆島の魅力を余すことなく表現するために、島内をくまなく見て歩き回ったと。八十八か所の霊場も、半分以上巡ったそうです。 その、プロ根性には、頭が下がる思いです。映画のなかの小豆島、本当に美しく撮られてました……、しかし、残念ながら私には、やや物足りなく感じたのです。いえ、映像が悪いと言っているのでは、決してないのです。たぶんこれは、実際に住んでいる者にしかわからない感覚かもしれません。映像でしか表現出来ない美しさもあれば、やはり実物が何より、というものもある、ということです。 暮らしていると、日々の生活のなかで。とびきり美しい海の色や空の景色に、出会える瞬間があるのです。夕暮れ時のなんともいえない空気の色に触れ、ぐっと込み上げてくるような感動を覚える時があるのです。映画のなかで、小豆島に辿りついた希和子と薫が、四方指から見下ろした、瀬戸内の風景も、もっともっと美しい時があるのです。 私は、そんな時、今湧き出た感情や、出会った色を、織物で表現したい、と強烈に思うことがあります。イメージが空から降ってくるように思え、逃すまいと、あがくのですが、なかなか難しく、失敗ばかりしています。ですから、映像をつくるということは、たいへんなことなのだろうと、思います。 映画『八日目の蟬』に関しては、その点だけが少し勿体無いと、感じました。 それにしても、原作は良いのに、ドラマ化・映画化されると、コケる作品も多々あるなか、この作品は、それぞれに魅力があり、立派に見ごたえのあるものとなっています。 作品に出会い、これから島を訪れてみたいという方、少なからずいらっしゃることでしょう。 ならば、お願いがあります。小豆島の魅力は何気ない風景のなかに、潜んでいます。観光マップ片手に、観光地を巡るのも、もちろん良いのですが、出来れば、のんびり滞在するつもりで、いらして下さい。浜辺で、ぼーっとしながら、ゆったりとした時間の流れを感じるもよし、レンタカーやレンタサイクルで、あてもなくドライブするもよし。お遍路するのも良し。 きれいなものぜんぶ入った、広くて、大きな景色を体感しに、是非。 |
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