【五臓】腎の特徴

腎には次のような特徴があります。

  1. 腎主先天:腎は先天を主(つかさど)る
  2. 飲食物から脾が作り出すエネルギーを後天の精といいますが、これに対して、受精時に両親から受け継いだ有限の生命エネルギー先天の精といいます。先天の精は生命活動の根源を為すもので、先天の精の不足は、妊娠時の不育症や発育障害の原因にもなります。

    受精の際、両親のどちらか、あるいは両方に腎精不足があると、胎児に充分な先天の精を授けることができず、立つ、歩く、髪の毛が生える、歯が生える、言葉を話すのが遅い五遅(ごち)や、頭蓋骨の大泉門が閉じるのが遅くて頭が柔らかい、首が据わらない、手足に力が入らない、筋肉が柔らかい、口が閉じずによだれが止まらない五軟(ごなん)などの発育障害や発達障害、虚弱体質、アレルギー体質などがみられる場合があります。

  3. 腎主封蔵:腎は封蔵(ふうぞう)を主る
  4. 五行の水に属する腎は、水が自分以外のものを取り込んで溜めるように、ストックする性質があります。腎には生命活動のおおもととなる腎精があり、腎はこの腎精が漏れ出ないよう温存しています。この性質があることで、腎の生理機能が正常に営まれています。

    恐怖は腎に影響して封蔵作用を低下させます。子供がお化け屋敷で恐怖のあまりお漏らしをしたり、恐ろしい目に遭って一瞬で白髪になるのは、封蔵作用の低下によって腎精が損なわれるためです。

  5. 腎為水火之宅:腎は水火の宅を為す
  6. 宅とは居場所という意味です。ここでいう水火とは腎陰と腎陽、つまり腎にストックされた津液と熱エネルギーである陽気をいいます。

    腎陰も腎陽も腎精から作られ、腎陰は全身の臓腑・器官・組織を養い潤し、腎陽は温めて代謝や血行を促進しています。生命活動の根源となることから、腎陰、腎陽はそれぞれ真陰(しんいん)真陽(しんよう)あるいは元陰(げんいん)元陽(げんよう)ともいわれます。

    腎陰、腎陽は、生命活動のおおもとになる水と火なので、腎陰不足ではほてりやのぼせなどの熱症状が、腎陽不足では冷えや低体温などの症状が現れます。

  7. 腎主技巧:腎は技巧を主る
  8. 腎は作強の官、技巧に出づ。腎は重労働に耐え、動作が軽く、力のある臓腑で、精巧で俊敏である、という意味です。脳は髄海(ずいかい)といわれ、腎精からできた髄が海のように溢れた場所とされ、腎精が充実していれば脳は健全で智力が聡明になります。また、腎精が充実していれば筋骨が強健で動作が精巧になります。

    腎精不足では、脳も筋骨も養うことができなくなるため、発達障害や認知症あるいはロコモティブシンドロームやミオパチー、身体痛などの症状が現れます。

  9. 腎為水之主源
  10. 水液代謝には、三焦・膀胱などの臓腑が関わっていますが、これらを統括しているのは五行の水に属する腎です。腎の気化作用が水液代謝を主導することで、全身の水液代謝が正常に機能します。

    成人の場合、尿のもとになる原尿は一日に一升瓶約100本分作られますが、そのほとんどは再吸収され、排泄されるのは一升瓶1本弱です。これは腎が津液と湿濁を分別して、リサイクルできるものは再吸収し、本当に不要になったものだけを尿に作り変えて排泄しているからです。この機能が失調すると、むくみや乾燥など人体の水分バランスの崩れが現れます。

  11. 腎為気之根
  12. 呼吸とは息を吸って吐く動作で、現代医学では肺の機能に当たります。しかし、中医学では、呼気や浅い呼吸は肺の主気作用によって、吸気は腎の納気作用によって行われているとされます。肺は人体上部に位置し、散布、発散の宣発作用からも解るように樹木の表面を覆う葉のような役割を担っています。これに対して腎は人体下部に位置し、深く人体下部まで呼気を取り込み、樹木が大地になしっかりと張った根のようです。

    根が弱いと樹木の育ちも悪くなりますが、腎の納気作用が失調するとうまく息を吸い込むことができなくなります。過度の驚きは腎に影響するため、パニックになると呼吸のバランスが崩れて過呼吸になることがあります。

  13. 腎生髄:腎は髄を生ず
  14. 腎には腎精をストックする蔵精作用があり、腎精からは髄が生じます。髄とは骨髄・脊髄・脳髄を指し、骨や脳と関連があります。骨は髄によって養われ、髄が海のように溢れたものを脳といい、脳の別名を髄海(ずいかい)といいます。

    受精時に両親から受け継ぐはずの腎精が少なかったり、幼少期に高熱や大病で腎精を損傷したりすると、脳を満たすことができず、発達障害になることがあります。過度の頭脳労働は腎精を損ない易く、腎の機能失調の原因になります。

  15. 腎主骨:腎は骨を主る
  16. 髄が骨を充たすことで、骨骼の発育や成長が促進されます。また、歯は骨餘(こつよ)といわれ、骨が充実していなければ歯も脆くなります。

    両親由来で有限の腎精は、加齢とともに減少するため、高齢になると骨粗鬆症や歯が抜けるなどのリスクが高まります。無理なダイエットや偏食などで、後天の精から先天の精を補えなくなると、年齢に関係なく、骨折や歯が欠けるなどの症状が現れます。