以毒攻毒:毒を以て毒を攻む

病の原因が人体に不要なものの停滞や蓄積である場合、それを取り除く方法として、使い方によっては人体に悪影響が出かねないものを利用して治療することがあります。

現代医学でも、催吐の目的で塩水を用いることがありますが、中医学でも同様の治療を行うことがあります。塩水自体は摂り過ぎると生命活動に支障を来しますが、少量用いることで停滞している不要なものを吐き出させることができます。

塩に代表されるしょっぱい味を中医学では鹹味(かんみ)といいます。鹹味には、催吐の他、潤して固まりを砕き、便通を促進するはたらきがあります。

例えば、便秘で大便がカチカチになって排便できない場合、芒硝(ぼうしょう:硫酸マグネシウム)という生薬を用います。芒硝は鹹味で、カチカチになった大便を潤して軟らかくし、砕いて排便しやすくするはたらきがあります。中医学的な見方をすると、これと同じ理論で便秘を改善するために現代医学で用いるのが酸化マグネシウムです。マグネシウムといえば減塩醤油などにナトリウムの代用として用いられるもので、しょっぱい物質です。大便が腸に停滞していたことで起こる腹部膨満感やおなら、食欲不振、イライラなどの症状は、カチカチだった大便を芒硝で砕いて排泄させることで改善できます。

生薬の中には有毒とされるものもありますが、その毒性と有用性を考えた時、有用性が勝れば治療に用います。これには、加工や他の生薬との併用で、毒性を減弱させる先人の知恵が生きています。