【五臓】肝の特徴

肝には次のような特徴があります。

  1. 肝主筋、其華在爪:肝は筋を主(つかさど)り、その華は爪に在り
  2. 肝には蔵血作用があり、肝にストックした血が筋膜や筋腱を養うことで、正常な運動を行うことができます。また爪は筋餘(きんよ)すなわち筋の余りであるため、肝血によって滋養されまます。

    過度の運動により肝血が不足すると、筋を養うことができなくなるため、筋肉痛や筋肉の痙攣が起こります。加齢や月経などで肝血が不足すると、爪を滋養できなくなり、爪が白っぽくなってすじが入ったり、割れやすくなったりします。

  3. 肝開竅于目:肝は目に開竅(かいきょう)す
  4. 肝の経絡は目に通じ、肝血が目を滋養することで、目は正常に機能することができます。

    加齢や食餌の不摂生、女性では月経、妊娠、授乳などで肝血が不足すると、かすみ目や視力低下が起こります。また長時間PCを使うなど目の酷使は肝血を消耗し、まぶたの痙攣や手足のしびれなど、肝血不足による筋の営養不足を引き起こします。

  5. 肝以胆為表裏:肝は胆と表裏を為す
  6. 五行の色体表を見ると、肝と胆は同じ木に属していることがわかります。肝と胆は経絡で繋がり、相互に影響しあっています。胆から分泌される精汁は肝の余気から作られ、胆の疏泄は肝の疏泄によって統括されています。

    リラックスした状態を好む肝がストレスを受けると、肝の疏泄作用が低下し、イライラや精神抑鬱などの精神症状が現れることがあります。この状態は表裏関係にある胆にもすぐ影響し、胆の機能低下により不安感や猜疑心が強くなり、精神症状が更に悪化することがあります。

  7. 肝主怒:肝は怒を主る
  8. 肝は怒りの感情と密接な関係があります。激しい怒りを感じると、など生命活動に必要なものが人体上部に逆流し、顔面紅潮、目の充血、頭痛、めまい、体の震え、胸や脇の脹った痛みなどが現れます。ひどい場合には人事不省になって倒れることもあります。これは怒りによって肝の疏泄作用が失調したためです。長期にわたる怒りや過度の怒りは、肝の機能失調を引き起こす原因になります。

    ボールが当たって窓ガラスが割れた時、頭から湯気が出そうな勢いで顔を真っ赤にし、目を血走らせ、わなわな震えながら「コラーッ!」とは、昭和のアニメでよく見た図。怒気で肝が傷ついた典型です。

  9. 肝主謀慮:肝は謀慮を主る
  10. 肝は、戦の際に深謀遠慮する将軍に喩えられますが、これは肝が意識や思惟活動と密接な関係があるということの表現のひとつです。精神活動の中心は心にありますが、正常な精神活動には、肝の蔵血作用疏泄作用も不可欠です。

    PMSでイライラしたり、マタニティブルーになるのは肝血の不足が原因です。ストレスがある時、考えても仕方のないことをぐるぐる考えてしまうのは肝の疏泄作用の低下が原因です。

  11. 肝主昇発:肝は昇発を主る
  12. 肝の経絡は足から頭に向かっています。肝の機能が正常であれば、春に木々の勢いが増し、上に向かってのびのびと成長するように、肝気もほどよく上昇し、肝はリラックスした状態を保ち、疏泄作用蔵血作用が発揮され、生気が充実した状態になります。

    しかし、ストレスなどにより昇発作用が異常亢進すると、頭痛、めまい、目の充血など、人体上部に不快な症状が現れます。

  13. 肝主動:肝は動を主る
  14. 肝は疏泄作用により、情志活動、消化吸収、気血の運行をスムーズに動かしています。

    木々が風になぶられるように、肝の病は、めまいやふるえなど、動きと関係のある症状が現れやすいという特徴があります。

    ストレスなどで肝の機能失調が起こると、お腹の脹りやため息など気の運動の停滞が見られますが、これは疏泄作用の低下によるものです。蔵血作用の低下では、痙攣や不随意運動などの運動障害が現れます。

  15. 肝主血海:肝は血海(けっかい)を主る
  16. ここでいう血海とは、血が海のようにたくさんあることを表現したもので、全身の血のことを指しています。肝には蔵血作用があり、血のストックと血流量の調節を行っています。

    蔵血作用が低下すると、血の絶対量が不足するだけでなく、血流量も低下して血行不良が起こります。全身の血液不足や血行不良では、顔や唇の色が悪い、めまい、立ち眩み、動悸、不眠、手足のしびれ、肩こり、痛みなどの症状が現れます。

  17. 女子以肝為本:女子は肝を以て本と為す
  18. 女性には、月経、妊娠、出産、授乳など特有の生理機能があり、どれも肝と深い関係があります。経血や母乳は肝血から作られますが、これには肝の蔵血作用が大きく関与しています。女性特有の生理機能は、どれも肝の疏泄作用によってスムーズに行われます。

    蔵血作用や疏泄作用の低下は、月経不順やPMS、不妊、妊娠中や産後の不調、乳汁分泌の不足などの原因となります。

  19. 肝体陰而用陽:肝は体は陰にして用は陽なり
  20. 体とは実体や実質、用とは作用や機能を指します。肝は陰に属するをストックする蔵血作用があるため体は陰に属します。しかし、心身の機能をスムーズにする疏泄作用があり、動を主り、命門(めいもん)から発する相火という陽気とも関係し、また肝の病は動きを伴う風や熱として現れるものも多いため、用は陽に属します。

    体と用が陰陽相反するため、肝はバランスを崩しやすく、血の不足は筋肉の痙攣やしびれなど風の症状や、のぼせなど熱の症状に発展し、熱の蓄積は血の消耗や血行不良を引き起こします。

  21. 肝為剛臓:肝は剛臓と為す
  22. 剛とは剛強、性急という意味です。肝はリラックスやスムーズな状態を好みますが、いいかえればストレスや過度の精神刺激を嫌う臓腑といえます。そのため、これらを受けると異常なハイテンションやイライラなど、肝の機能亢進による激しい症状が起こります。また、肝は我慢強く、ストレスがあっても表面上は正常に機能するため、病と気づくまでに時間が掛かることもあります。

    ストレスや意に沿わない状況が続くと、ある時急に体が動かなくなったり、やる気が出なくなったりして、うつと診断されることがありますが、正に肝が剛臓たる所以です。

  23. 肝喜条達:肝は条達(じょうたつ)を喜ぶ
  24. 条達とは、のびのびとリラックスした状態をいいます。肝は五行の木に属し、疏泄作用があることからも、木々が枝を伸ばすように、のびのびとリラックスした状態を好むことがわかります。

    意に沿わないことやストレスによって、この状態が維持できなくなると、胸や脇が詰まってすっきりしない、ため息、イライラや抑うつ感などが現れます。

  25. 肝悪抑鬱:肝は抑鬱は悪(にく)む
  26. 肝は条達を好むため、気持ちが沈んでクヨクヨした抑鬱状態を嫌います。抑鬱状態になると疏泄作用が低下し、情志活動、消化吸収、気血の運行などが停滞します。

    落ち込むことがあると、食欲不振、お腹の脹り、やる気が出ない、不眠、血行不良などの症状が現れますが、入浴や運動、楽しいことを考えたり、見たりすることで疏泄作用が回復し、症状を軽減することができます。

  27. 肝悪風:肝は風(ふう)を悪む
  28. 肝が属する五行の木には風も属します。動を主る肝のバランスが崩れると、めまいや筋肉のけいれん、しびれなど、まるで風が吹いて木々を揺らすような症状が現れますが、外を吹く風の影響も受けやすいという特徴があります。

    風に当たった後、めまいやたちくらみが起こったり、筋肉が攣りやすくなったりするのは、風によって肝の機能に影響が現れるためです。