寒極生熱:寒極まれば熱を生ず

中医学の基礎のひとつに陰陽論があります。自然界、人体を問わず、すべての事象は陰と陽の相反するものからなり、互いの存在を証明し、反発しあい、また相互に変化していると考えます。

例えば季節。暑い夏があることで、寒い冬を感じることができます。雨季があるから乾季がわかります。暑い夏だから冷たいものを欲し、寒い冬だから温かいものが美味しいと感じます。暑い夏が極まれば寒い冬がやって来ます。反対に寒い冬が極まれば、暑い夏になります。

これは自然界だけではありません。自然の一部である私たち人間の体も同じです。

例えば、寒さが原因でかぜをひいたとしましょう。ひきはじめには、ゾクゾクと寒気がして、透明でサラサラした鼻水が出たり、くしゃみ、節々の痛みなどが現れます。しかし、そのまま放っておくと、体が熱っぽくなって、鼻水も黄色く粘っこいものに変化し、温まると咳が出たり、黄色くて粘った痰が出るようになります。これは寒邪が極まったために熱邪に変化したことを表しています。

この場合、ひきはじめには葛根湯やしょうが湯など、体を温めて寒さを散らすものが効果的ですが、熱っぽさや温まると症状が悪化する場合には、却って悪化させてしまいます。寒邪が熱邪に変化した後は、症状に合わせて白虎湯、五虎湯、麻杏止咳顆粒など、余分な熱を冷ますものを用います。

もちろん寒さだけが熱に変化する訳ではなく、熱もまた冷えに変化します。 例えば熱中症。初期段階では体が熱く発熱し、顔色や皮膚の色が赤くなって、大汗をかき、のどが乾いて冷たいものをたくさん欲しがりますが、重症になるにつれ、体が冷たくなってチアノーゼを起こし、冷や汗が出るものの、水分は欲しがらなくなります。これは熱症状が冷えによる症状に変化したことを示します。

このように、寒熱は極限状態になると、反対の性質のものに変化します。陰陽が分離して片方だけになるのは、生命活動の停止を意味します。